「世界の国々がネットワークでつながり、世界中の能力をオンラインで活用する時代になった」――。サミュエル・パルミサーノ会長率いる米IBMは、こうした判断の下、インドのサービス拠点化を進めている。「IBM イズ フラット」を掲げ、過去3年間に20億ドルを、今後3年間にさらに60億ドルをインドに投資する。
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写真1●米IBMインド法人のシャンカー・アンナスワミ社長 |
インドIBMの従業員数は、1995年の4000人から2006年に5万2000人になり、米本社の12万7000人に次ぐ規模にまで拡大している。売上高も05年度(12月期)に前年同期比55%増の約5億1000万ドルを達成した。IBMインド法人のシャンカー・アンナスワミ社長は、IBMのサービス戦略におけるインドの役割を、「インドの優秀なリソースを使いたいと言う顧客が世界中に増えている。その声に応えるため、サービスの供給量を増やすと同時に、サービスのビジネスモデルを変えていく」と語る(写真1)。
27のサービス拠点がインドに
米IBMがインドから展開するサービスは、開発、運用、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の3種。それぞれのサービス提供拠点となるのが、「アプリケーション・サービス・センター」「グローバル・サービス・デリバリー・センター」「BTO(ビジネス・トランスフォーメーション・アウトソーシング)デリバリー・センター」だ。インド国内に3種合計で27の拠点あり、一国で抱えるサービス拠点数としては最大規模である(図1)。
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図1●米IBMはインドに各種サービス拠点を集中させ始めた 「アプリケーション・サービス・センター」は全世界23 カ所のうち六つがインドにある。運用を担当する「グローバル・サービス・デリバリー・センター」を含め、各センターはそれぞれ数千人から数百人規模 |
アプリケーション・サービス・センターは、全世界22拠点のうち5つがインドにある。07年には、世界で23番目、インドで6つめとなる開発センターをチェンナイ(旧マドラス)に新設する。インドIBMでグローバル・デリバリー・コンサルティングおよびアプリケーション・サービスを担当するアミターブ・レイ副社長兼パートナーによれば、「チェンナイでは150人規模で開発を手掛けてきた。だが、開発量の増加に対応し切れなくなったため、3000人規模のセンターに昇格させる」という。
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写真2●インドIBMの本社 |
グローバル・サービス・デリバリー・センターは、世界10カ国以上に分散され、うち3拠点がインドにある。その1つが、バンガロール市にあるインドIBMの本社の敷地内にある(写真2)。総床面積は約3000平方メートル。システムの遠隔監視・操作を実行する「コマンドセンター」には、計450人の技術者が三交代、24時間365日体制で詰める。コマンドセンターの前面にある大型モニターには、英BBCと米CNNなど監視対象地域のテレビ映像を流し、各地域に台風や津波などの天災、暴動や戦争などが発生していないかなどもリアルタイムで把握する。BCP(事業継続計画)のサービス・レベル契約に応じたシステムやデータの引き継ぎ作業を早期に着手するためだ。
BTOデリバリー・センターは、印コールセンター大手の旧ダキッシュを04年に買収したのを皮切りに、3都市で6拠点を増設。ダキッシュの従業員数は買収時の6000人から3万人弱にまで増えた。現在、約30の顧客を抱えている。例えば、英国本社のグローバル企業大手を対象にしたBTOルームでは、38歳の責任者を筆頭に、公認会計士資格を持つ技術者数人を含む約150人が、午前11時から午後8時まで、独SAP製のERP(統合基幹システム)を操作しながら売り掛け・買い掛けの伝票処理に従事している。ランディ・ウォーカーMBPSゼネラルマネージャーは、「世界各地にあるBPOセンターの中で、インドは、人事、財務、CRM(顧客関係管理)分野のスキルが高い」と話す。