2002年秋に登場して以来、家電各社が追随して発売し始めた掃除機能付きエアコン。本格的な普及を図るべく、店頭ではフィルター掃除の実演展示も見られる(左)。写真上は、初めてフィルター掃除メカを搭載した富士通ゼネラル「ノクリア」の最新モデル |
調査員Aはエアコンの買い替えを検討中だ。「家電量販店をのぞくと、吸気口のフィルターを自動で掃除する機能が付いた新製品がずらりと並んでいた。ここまで増えていたとは」と驚きを隠さない。
調査員Cは、「掃除くらいは自分でするもの。かえって電力を消費する余計な機能なのでは」と首をひねる。
国連大学の安井至副学長は、「余計な機能かどうか、予断は禁物だ。実態を把握してから判断しても遅くはない」と調査を指示した。
まず調査員は、フィルター掃除の仕組みを調べ始めた。一定時間以上、冷暖房すると、エアコン内蔵の掃除メカが自動的に動き出す点は各社共通。しかし、フィルターに付着したホコリの取り方は、フィルターを上下に動かしながら固定したブラシでこすり取る、ブラシを左右に動かすなど、各社で微妙に違う。ホコリを本体にため込む機種もあれば、排気ダクトから屋外に排出する機種もある。「他社との差別化に苦労した跡がうかがえる」と、調査員は苦笑する。
フィルター掃除の所要時間は、各社とも10分未満。調査員Bは、「フィルター掃除1回当たりの電気代は0.02~0.1円程度。消費電力量は5Wh以下だ。電気掃除機でフィルターのホコリを掃除する人がいることを思えば、エアコンの掃除機能が電力の浪費とは言い難い」と分析する。 続いて、安井副学長は、掃除メカ搭載エアコンの製造時の環境負荷が、搭載しないエアコンに比べてどの程度、上積みされているかに注目した。
掃除メカ搭載機は、室内機の重量が約3~5kg重い。重量が増えたということは、金属や樹脂など材料の使用量が多く、また、工場での生産に使う電力量も増えるので環境負荷も増えたとみてよいが、「室外機も含むと、掃除メカの重量は全体の重量の1割に満たない。掃除メカ製造の環境負荷増はわずか」と判断した。
年2回の掃除では不十分
「掃除機能の追加による環境負荷より、フィルター掃除の省エネ効果を確認すべきでは」と発言したのは調査員A。「フィルターが目詰まりすると冷温風が吹き出しづらくなる。省エネしたいなら、こまめなホコリの除去は欠かせない。後は消費者が、自分で掃除するか、エアコンの掃除機能に任せるかを判断すればいい」
メーカーのカタログでは、フィルター掃除をしないと、した場合と比べて電力消費量が約25%増えてしまうとアピールしている。掃除機能を搭載していない機種の1年間の電力消費量を1000kWhとすれば、フィルターのホコリを放置したままでは、電力消費量は250kWh増え、CO2排出量は約100kg増加する計算になる。10年間使えば、CO2排出量の差は約1tになる(下の図)。
図●掃除機能付きエアコン(冷房能力2.8kW)を10年間使い続けた場合のライフサイクルCO2 |
カタログに目を凝らしていた安井副学長が、ページ片隅に小さな文字で書かれた「約25%省エネ」の根拠を「なかなか興味深い」と読み上げた。
「『フィルター掃除をしない場合とは、年に2回、掃除をするケースを想定しています』と書かれている。つまり、季節の変わり目にまとめてホコリを取る程度では不十分とメーカーは主張しているわけだ」と読み解く。「しかし、人手の掃除の頻度は、それほど高くないのでは」
|
構成/建野友保 イラスト/斉藤よしのぶ |