これまで見てきたように,XCAPはHTTPを使って,サーバー上のXMLドキュメントをさまざまに操作することができるプロトコルである。規約そのものはシンプルだが,その活用のためにはXMLスキーマやXML名前空間をはじめとするXML技術群への習熟が求められる。XML技術者にとっては理解しやすいが,IMAPやACAPのようなコマンド/レスポンス型のプロトコルに慣れ親しんだ技術者にとっては,かえって縁遠いものに感じられるかもしれない。
しかしネットワーク・システムにおけるデータは,あらゆるものがXMLへと収れんしつつある。XMLという器を用意し,その取り扱い方を標準化することで,アプリケーションや機器を自由に組み合わせられるようにする。現在ITU-Tを中心に策定が進むNGNも例外ではない。実際,一部のインタフェースにXCAPを採用している(図1)。
図1●通信事業者が構築中の次世代ネットワーク(NGN)のPSTN/ISDN エミュレーションにおけるXCAPの利用 |
現実にアプリケーションを開発されている読者であれば,以下のような疑問を抱かれるかもしれない。そもそもXCAPは,AUIDで識別されるアプリケーション用法を定めている通り,データ構造自体はアプリケーションに依存している。データのアプリケーションに対する依存性がなくならない中で,「標準的な」プロトコルを用いて設定情報を操作する必要性は必ずしも高くないのではないか,と。ベンダー独自方式ではなくXCAPを用いることで,むしろ複雑性が増すケースも多いかもしれない。
しかしあらゆるレイヤーのインタフェースを標準化することは,次世代のオープン・システムを構築する上で欠かせない要素となる。これまで連携が難しかった「アプリケーションの設定データ」がXCAPでやり取りできるようになったとき,これまでにないシステムが生まれる可能性を秘めている。今後クローズドなシステムをオープンなシステムに置き換えようとするのであれば,XCAPを選ばない理由はない。
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