XCAPは,サーバー上のデータをクライアントから操作するためのプロトコルの一つである(図1)。遠隔サーバー上のファイルを操作するのであれば「WebDAV」が有名であるし,通信プロトコルに長く携わっている読者であれば「ACAP」といったプロトコルを憶えているかもしれない。データを操作する方式という意味では,ファイル共有をはじめとするさまざまなプロトコルがすでに存在する。
図1●XCAPの位置づけ サーバー上のファイルを新規作成/削除し,その一部(リソース)を読み書きするのが基本機能。WebDAVより多機能で,ACAPより軽量なプロトコルを目指して開発された。 [画像のクリックで拡大表示] |
なぜXCAPが注目を浴びているのかと言うと,IP電話やインスタント・メッセンジャーで使われる「SIP」において,データの操作に関する標準の本命と目されているからだ。
SIPのアプリケーションを実装するうえで,データの操作は欠かせない。例えばインスタント・メッセンジャーでは,互いの状態やアドレスを管理する「プレゼンス・リスト」(お友達リスト)を持つのが一般的だ(図2)。ユーザーはこのリストに基づいて,メッセージを送ったり,送るのを控えたりする。これらの機能を規定しているプロトコルの「SIP/SIMPLE」では,プレゼンス・リストをサーバーで管理する仕組みになっているため,友達を新たに追加したり,グループを変更したりするには,何らかの手段でサーバー上のプレゼンス・リストを書き換えるプロトコルが必要になる。
図2●一般的なインスタント・メッセンジャーのシステム構成 ユーザーの状態をIMクライアントが随時更新する仕組みになっている。 |
ところがSIPには,データ操作の手順に関する規定がない。このためプレゼンス・リストの実装を見てみると,Webページ上で編集するものや,独自プロトコルを実装するものなど,アプリケーションごとに方式が異なっている。
このような問題に対して,サーバー上に置かれたデータを,クライアントから操作する標準的な方式として考えられたのがXCAPである。先に挙げたインスタント・メッセンジャーだけでなく,NGNではアプリケーションの設定を保存するプロトコルとしても使われる予定だ。
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