写真12 全員の参加意識を高められるように目安箱を設置
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 車載通信機器などを製造・販売するヨコオが、日本での成功体験をもとに中国でトヨタ流改善を始めたのは2006年。その中心人物である多胡 一男氏に、取り組みの詳細をほぼリアルタイムでメルマガに寄稿してもらった。1年前の話ではあるが、現地に改善活動を根づかせるためには何が課題となるのかなど、中国で改善に取り組もうとする企業にとっては大いに参考になるだろう(日経情報ストラテジー編集部)。

多胡 一男
東莞友華汽車配件有限公司(ヨコオの中国法人) OJT-Sプロジェクト 経理担当


 皆さん、こんにちは。中国からの第12回となります。
(原文は2007年4月18日付け日経情報ストラテジー・メール)

 昨年11月にスタートした第2期カイゼン活動ですが、あっという間に区切りをつける時期が来てしまいました。カイゼングループごとに進み具合や成果は違いますが、5カ月間の活動を総括し、新たな取組みに向け心機一転したいと思います。

■カイゼン活動

【1】倉庫カイゼンチーム

 第2期活動のお話しをする中で多くの紙面を割いたカイゼンチームです。このチームが導入した「かんばん」は次の通りです。

(1)倉庫~組立工程:部品引取り指示かんばん
 最初に手がけた「かんばん」であり、対象とした部品300点弱すべてに導入することができました。

(2)組立工程~成形工程:内作指示かんばん
 約40部品を対象に導入を進め、これも全数導入が完了しました。

(3)生産管理~中国サプライヤー:納入指示かんばん
 中国国内の数量と納期の安定している部品メーカー2社との間で、3月から試行を開始しています。この現地の部品に「かんばん」を導入することが、ジャスト・イン・タイムによる在庫低減に一番効果があります。数点が始まったばかりの試行段階ですが、まだ見えていない様々な課題を解決しながら全数適用にむけ準備を進めています。

(4)生産管理~日本ヨコオ:納入指示かんばん
 中国国内と同様に、日本からの部品に対しての「納入指示かんばん」も運用を開始しました。ただ、日本からの部品は船輸送が基本のため、ある程度の在庫は必要となるので「在庫の見える化」と使ったもの(必要な数量)を注文することに主眼を置いています。

(5)導入後のフォローの大切さ
 前回も触れましたが、「かんばん」そのものの理解がまだまだですので、メンバーには「かんばんポスト」「ストアー」「倉庫在庫」「手配状況」など繰り返しフォローし、現場担当者に仕組みの理解を深めるように指示をしています。また、「問題に即対応し、カイゼンすること」、この繰り返しが定着化の「カギ」と話しています。

 数種類の「かんばん」導入により、対象部品の3月末在庫は前月比約40%減と着実に効果を上げています。

【2】マイクロアンテナ

 OJT-Sは5Sから始めますが、さすがに約1年間活動をしてきただけあって、新規設定のライン周りを除けば評価も90点以上を維持しており、現場への定着が見られます。

 組立工程では作業台の上下・前後に「今使う物以外は置かない。掃除ができていること」を常に言い続けた結果が実ったと自負しています。

【3】GPSアンテナ

 11月の開始当初は、5Sで苦労しましたが、現在は85点まで引き上げられ、課題として残るのは決め事をいかに守り続けさせるかの「しつけ」の部分と認識しています。

 この製品は春先にかけ新機種が立ち上がっているため、その工程への5S活動も至急展開をしなければなりません。

 標準作業と一個流しは苦戦しています。ただ、製品や設備の不安定さばかり言っていられないので、作業者に対して後工程が止まっていたら作業を「止める・呼ぶ・待つ」、定位置には設定以上置かない、など「正常と異常」の考え方を徹底的に指導させています。

【4】中継コード

 例年の旧正月明け(3月)より離職者が多く、また受注数も増加傾向のため、新人が大量に入ってきています。工程投入前の教育を毎日実施しないと間に合わない状態が続きました。

 実践場面では、新人専用ラインでベテラン班長の指導の下、繰り返し作業訓練です。この5カ月で職場全体のカイゼンはできませんでしたが、作業の安定・品質の安定はほかの製品より実践できた職場です。

【5】メンバー個々の成長

 第1期メンバーはリーダーとしてカイゼングループを主導してきましたが、現場へ説得がなかなかうまくいかない場合もあり、知識はあるが実行力や組織力が発揮できなかったように思います。第3期では活動の目的と自分たちの役割・任務について再指導をし、OJT-Sのリーダーに育てていきます。

 第2期メンバーは個人差はありますが、カイゼン活動を実践しながら力をつけてきました。第3期では小テーマを自己完結させるつもりです。

■第3期に向けて

 対象とする製品は友華汽車で未着手だった車載TV用フィルムアンテナ、携帯電話用アンテナを生産する製造へのOJT-Sを追加します。

 2期から引き続き活動するGPS・中継コードと同様に、5Sから標準作業、見える化と続くトヨタ生産方式によるものづくり(以下「TPS」)の展開を進めて行きます。

 育成面からはOJT-Sメンバー個々のレベルアップを図ることが友華汽車で「TPS」を展開し定着させる必要条件と感じた5カ月間だったことから、原点に戻って再教育を進めていきます。

■赴任生活

旧正月明けなのに寒い中国

 旧正月が明け10日もすると暖かくなり半袖で十分と言われていましたが、3月半ばになっても寒い日が続き、折角洗濯をして防虫剤を入れ片付けたスウェットの上下を出す破目になり、風邪を引かないよう気をつける日々でした。

 それから4月始め、午前10時の休憩に喫煙所(屋外)に行った際、急に空が暗くなり車もライトを点けて走行する程の、まるで皆既日食のような状態になりました。その後雷と激しい雨が30分程続く・・という貴重な体験をしました。

では、今回はこの辺で。


多胡 一男(たご かずお)
1981年、株式会社ヨコオ(車載通信機器・無線通信機器などの製造・販売)入社。2006年6月より同社中国工場である東莞友華汽車配件有限公司にてOJT-Sプロジェクト 経理担当。ヨコオでは、人事部門にて、人事システム革新テーマ等に取り組む。その後、車載通信機器生産部門責任者に就任。2004年には韓国での合弁会社の製造立ち上げ責任者として駐在。2005年からはOJT-Sプロジェクト(トヨタ生産方式に基づく職場改善・人材育成プロジェクト)に参画し、製造現場のものづくりシステム改善に取り組み、現在同社中国工場への展開で奮闘している。同社のWebサイトはこちら