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協力会社を巻き込み配送状況を顧客に明示--アスクル

2007/12/11
渡辺 一正=日経コンピュータ (筆者執筆記事一覧
出典:日経コンピュータ特別編集版 2007年7月23日号20ページより
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

オフィス用品や医療用品などの通販大手アスクルが構築した新配送サービスシステム「シンクロカーゴ」は,06年12月にスタートしたサービスだ。すでに顧客満足度向上へ着実な効果が出始めている。

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 アスクルは2006年12月、配送サービスシステム「シンクロカーゴ」を完成させた(図1)。東京を皮切りに、07年中に全国でサービスを開始する。4年かけて構築してきた同社のITサービス基盤「e-プラットフォーム」の最後のピースである。

 e-プラットフォームは、複数のシステムで構成されるITサービス基盤の総称だ。まず02年にサプライヤ向けの在庫管理システム「シンクロマート」が稼働、04年に販売店支援の「シンクロエージェント」が、06年12月には新CRMシステム「シンクロスマイル」が、それぞれ稼働している。

 シンクロカーゴは、アスクルが協力運送会社と顧客に対して提供する、携帯電話とWebを使った情報共有システムだ。顧客に対しては、専用のWebサイト「いつくるマップ」上に配送状況をリアルタイムで表示する。グーグルマップをマッシュアップして作った「いつくるマップ」では、自分の荷物を積んだドライバーがどこにいるかを地図上で確認できる。その画面の中には、あと何番目に届けられるのかといった情報も表示される。いちいちコールセンターに問い合わせなくても済ませるのが目的で、アスクルは顧客満足度が高まると期待している。

図1●新配送サービスシステム「シンクロカーゴ」によって、顧客と配送を結び、到着時刻などの情報を共有できるようになった
図1●新配送サービスシステム「シンクロカーゴ」によって、顧客と配送を結び、到着時刻などの情報を共有できるようになった
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 専用サーバーに記録された情報は、アスクルのCRMシステムとも連動する。コールセンターのオペレータはそれを見ながら、顧客からの問い合わせにすぐに答えられる。

 配送情報は、専用のバーコード付き携帯情報端末(カシオ計算機製)を持ったドライバーが、荷物を運び終わると同時に、携帯端末を通して報告する。従来は、ドライバーが何時に到着して、きちんと配達が完了しているかどうかなどの情報を、アスクル側は把握しづらかった。運送会社はあくまでも協力会社であって、アスクルが実際のオペレーションにまで踏み込むのは難しい。

 アスクルのコールセンターには、1日に5000件以上の問い合わせが入る。そのほとんどが配送時刻に関するもの。オペレータは担当する運送会社に電話をして、状況を確認しなければならなかった。そのため、顧客への回答も10~30分程度かかっていた。「回答したときには、すでに荷物が届いていたということもあった」(アスクル広報)という。

 配送部隊を自前で持たないアスクルが、唯一顧客と直接触れる業務、すなわち配送業務をブラックボックス化したままでは、これまで以上のサービス向上は望めない。しかも、そうしたサービスは、大手宅配業者なら既に実現している。

協力運送会社をまとめて“仮想企業”に

 アスクルの配送業務は、全国区の大手宅配業者に独占的に委託するのではなく、各地域にある主に中小の運送会社を開拓して構築した自前の配送流通網だ。親会社である文具メーカー大手のプラスが持っていた配送網があったからだ。それを強化して「明日には届く」ビジネスモデルへと転換してきたのだ。現在、全国に約1100台のトラックがアスクルの商品を運んでいる。

 そうした企業をシンクロカーゴでまとめあげ、情報共有基盤を構築することで“仮想的な企業”としてふるまえるようにする。いつ、どこのドライバーがどの荷物の配達を終えたのか。こうした配送情報を、アスクルでも協力配送会社でも、リアルタイムに共有できるようになれば、大手とそん色ないサービスが実現できる(図2)。

図2●協力パートナーである運送会社ごとに配送追跡サービスが異なっていたため、顧客からの問い合わせに対して、かかる時間がまちまちだった
図2●協力パートナーである運送会社ごとに配送追跡サービスが異なっていたため、顧客からの問い合わせに対して、かかる時間がまちまちだった
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 しかし、協力会社を動かすのは難しい。強制するのではなく、自らがメリットを見いだし、参加してもらわなければならないからだ。アスクルが彼らにとっての魅力をどれだけ出せるかが鍵となる。

 そこで第1に、コスト面でのハードルをできる限り低くする工夫をした。開発に約4億円を投じたシンクロカーゴのシステムを無料で提供することにしたのだ。ドライバーが1人1台持つ携帯情報端末(Windows CE)は1台数万円。それも無料で配布する。ただし、連動させる携帯電話(FOMA)だけは各社の負担だ。ただ既にFOMAを持っていれば、初期投資はほぼ0円で済む。配送会社にすれば、無駄なIT投資を避けられるうえ、大手並みの情報武装が得られる一挙両得のプランになる。

サービスレベル向上のための改善は続く
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