企業内ネットワークに接続されたPCの「インベントリ情報(PCのハードウエアおよび導入済みソフトウエアに関する資産情報)」を収集するIT資産管理ソフトが注目を集めている。「購入したライセンス数を超えてソフトウエアが使われてないか」といったコンプライアンスへの対策を講じる上で,有効だとみなされているためだ。

 IT資産管理ソフトは基本的に,専用のサーバー・ソフトと,PCに搭載するエージェント・ソフトから成る。エージェント・ソフトがインベントリ情報を取得し,それをサーバー・ソフトに送る(図1)。

図1●IT資産管理ソフトの仕組みと選択ポイント
図1●IT資産管理ソフトの仕組みと選択ポイント
IT資産管理ソフトを選択するときのポイントは,「管理できるPCの種類」「標準搭載の機能」「運用のしやすさ」の三つがある
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 サーバー・ソフトでは各PCのインベントリ情報を集中管理する。個々のPCの資産情報を閲覧できるだけでなく,複数台のPCを横断する形で,資産の種類ごとに関連情報を確認できる。例えば,マイクロソフトのオフィス・ソフトの何がどのPCに導入されているかを一覧表示できる。また,エージェント・ソフトが収集したインベントリ情報を基に,各PCのセキュリティ対策状況を一つの画面にまとめて表示する機能を備える製品もある(図2)。

図2●IT資産管理ソフトの管理画面の例
図2●IT資産管理ソフトの管理画面の例
左は管理対象であるPCに搭載されているオフィス・ソフトの資産管理情報を表示する「QND Plus」の画面。右は,管理対象であるPC全体のセキュリティ対策の状況を示した「LanScope Cat5」の画面
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 IT資産管理ソフトを導入することによって,インベントリ情報の収集や,資産別の所有数(あるいは導入数)をはじき出す作業を自動化できるので,自社内PCを対象とした資産管理作業の負荷軽減が見込める。福博印刷の生方一成氏(管理本部 経営企画グループ 課長代理)は,「IT資産管理ソフトを導入したおかげで,ソフトウエア資産の棚卸しをするときに,手間と時間をかけてPCを個別にチェックする必要がなくなった」と,メリットを語る。

セキュリティ対策にも役立つ

 最近は,セキュリティ対策の一環としてIT資産管理ソフトを導入するユーザーも目立っている。多くのIT資産管理ソフトが標準機能,あるいはオプション機能として持つ,ソフトウエア配布機能をセキュリティ・パッチの配布に活用するケースが少なくない。また,一部製品が備えるPCの操作ログを取得する機能を利用して,個人情報を含むような重要なファイルが社外に持ち出されていないかを監視するユーザー企業もある。

 こうしたIT資産管理ソフトをどのような視点で選択すればよいのか。まず(1)「管理対象にできるPCの種類」をチェックしたい。次に,(2)導入目的をかなえる機能が標準搭載されているかどうかを押さえたい。標準で備わっている機能は製品間で差異があるからだ。さらに,(3)「運用のしやすさ」を見極めたい。膨大な数のPCを管理したり,外部から持ち込んだPCを社内ネットワークに一時的につなぐ機会が多い場合には,重要な選択ポイントとなる。