オープン化と親和性高いモバイルWiMAX

 ワイヤレス・ブロードバンドに提案されている規格のなかでも,特にモバイルWiMAXはこうしたオープン化と親和性が高い。仕様自体が,オープン化を前提としているからだ(図5)。

図5●モバイルWiMAXは仕様自体がオープン化を強く意識している
図5●モバイルWiMAXは仕様自体がオープン化を強く意識している
MVNOとの接続を強く意識したネットワーク・アーキテクチャ仕様,メーカーによる自由な端末開発を促進する端末認証制度などを整えている。
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 例えばモバイルWiMAXのネットワーク・アーキテクチャには,回線事業者とMVNOをつなぐインタフェースが規定されている。このインタフェースを利用すれば,MVNO側で認証,許可,課金(AAA)やIPアドレスの割り当てといった端末の管理を行える。利用するプロトコルは,インターネット標準の技術を利用する。そのため,インターネット上でサービス提供している事業者は,既存の設備を活用してモバイルWiMAXのMVNO事業に参入できる。

 端末の相互接続性の保証もオープン化に向けた取り組みである。WiMAXの業界団体である「WiMAXフォーラム」は,機器の相互接続性を認証する試験を実施しており,認証済みの端末には「WiMAX Forum Certified」のロゴを与える。メーカーがロゴを取得していれば,モバイルWiMAX事業者のネットワークとの相互接続性が保証されるわけだ。事業者の接続試験を省くことができれば,端末オープン化を後押しする材料になる。さらに,端末を世界共通の仕様でオープン化すれば,同じ仕様の端末を全世界で販売でき,端末価格を抑えやすくなる。

当初は事業者による相互接続試験が必要

 ただし,完全に端末をオープン化するには課題が二つある。一つは,回線事業者による接続試験を本当に省けるかということ。もう一つは,端末をネットワークに接続する際の認証の標準化だ。

 オープンワイヤレスネットワークの深田社長兼COOは,「完全に相互接続を保証するのはかなり難しい」と見ている。そのため,サービス開始当初は,事業者側で接続試験を実施してそれを通過した端末のみをサービスの対象にする。

 ただ一方では「環境が整い次第,WiMAX Forum Certifiedを受けた製品は接続できるようにしたい」(深田社長兼COO)ともしており,将来的にはユーザーが店頭で購入したどんな端末でもつなげるようにする考えだ。アッカ・ワイヤレスやワイヤレスブロードバンド企画も,オープンワイヤレスネットワークと同様の方針である。

 認証について言うと,現時点の仕様では決まった認証方法がない。事業者ごとに異なる認証方法を採用すると,同じ端末を使って回線事業者を乗り換えることができなくなる可能性がある。そうなると,端末メーカーも世界中で同じ端末を販売しにくくなる。そのため,「WiMAXフォーラムで認証方法をどうするか議論が行われている」(オープンワイヤレスネットワークの諸橋知雄・技術開発部長)。