スカイパーフェクト・コミュニケーションズは2007年11月15日,東経124・128度CS放送「スカイパーフェクTV!」で放送を行っている事業者を対象にした,ハイビジョン(HDTV)放送の導入スケジュール説明会を行った。2008年秋をメドに,PPV(ペイ・パー・ビュー)チャンネルとプレミアムチャンネルを中心に10チャンネル程度で開始し,2009年秋にはベーシックチャンネルを中心に30チャンネル程度を追加し,合計40チャンネル程度でHDTV放送を展開する。また,放送事業者自らが衛星のトランスポンダ(電波中継器)を借りて放送を行う現在の事業モデルを,スカイパーフェクトが作る衛星役務利用放送事業者に放送事業者が番組を供給し,視聴度合に応じた番組供給料を受け取る「レベニューシェア方式」に変更する。放送事業者にとってはトラポン代などの固定費用がなくなるため,チャンネル運営のランニングコストを下げる効果があり,事業に参入しやすくなる。

 今後,放送事業者は2007年中をメドにHDTV放送に参加するかをスカイパーフェクトに伝え,2008年3月中には参加事業者が決まる予定となっている。説明会に参加した関係者によると,今回の説明会に先立ちスカイパーフェクトが放送事業者向けに行ったアンケートの結果,HDTV放送を希望する事業者のチャンネルはおよそ70に達するという。順風満帆の滑り出しのようにみえるが,放送事業者の心中は複雑だ。最も大きな不安は,HDTV放送がスムーズに立ち上がるかどうかという点にある。HDTV放送は映像の圧縮方式が現在の「MPEG-2」から「H.264」に変更されるため,既存のチューナーでは見られない。そのため視聴者をゼロから開拓しなければならない。とはいえ今回のタイミングを逃すと,後からHDTV放送を開始したくても帯域の空きがなく,参入できなくなる可能性が大きい。特に東経110度CS放送「e2 by スカパー!」でチャンネルを確保できなかった放送事業者は,「HDTV放送参入の最後のチャンス」という危機感が強いようだ。

 また,放送事業者がHDTV放送に対応するには,スタジオから送出機材までシステムを入れ替える初期投資が必要となる。そのうえレベニューシュア方式は,放送事業者にとってリスクを減らせる半面,リターンも少なくなる。説明会に参加した関係者は,現在の事業モデルではHDTV化に伴う初期投資を3年で回収できると試算していたが,新しい方式では5年以上かかりそうだという。「当分もうかりそうにないが,CS放送事業を続けるには話に乗らざるを得ない状況」(関係者)というのが本音だ。この関係者は,資金に余裕がない放送事業者を中心に,HDTV化を機会に衛星放送事業の再編や事業からの撤退が起こるのではないかとみている。