Qript
代表取締役社長 CEO
渡邉 君人

インスタント・メッセージ(IM)は、リアルタイムにちょっとしたメッセージをやりとりできるコミュニケーション・ツールである。電子メールと異なり、会話をするような感覚で利用できる。メモ代わりに利用でき、相手が開封したかどうかがわかるのが特徴である。

 インスタント・メッセージの利用が広がっている。友人同士での手軽なチャットなどプライベート利用が主流であるが、最近はビジネス・シーンでの利用にも注目が集まっている。

 インスタント・メッセージは,電話と電子メールの中間的な存在(図1)。相手とリアルタイムにメッセージをやりとりできる。会話をするような感覚で利用できる。リアルタイム性が高いといえば電話である。ダイヤルして相手を呼び出せば会話ができる。しかし、そのとき相手がいなければどうしようもない。メモを残しても行き違いになったりして、何度も電話をかけなおすこともよくあることである。

図1●インスタント・メッセージは電話や電子メールの弱点を補う
図1●インスタント・メッセージは電話や電子メールの弱点を補う

 この問題は電子メールが解決してくれる。相手がいなくてもメールを送信しておけばコミュニケーションが取れる。しかし、相手がメールを受信したかを確認できない。それこそリアルタイム性は期待できない。

 インスタント・メッセージは,この両者の弱点を補完してくれる。相手がオンラインかどうか、メッセージを送れば相手が開封したかどうかがわかる。返事がすぐ返ってくる可能性も高い。

相手とリアルタイムに結ぶコミュニケーション・ツール

写真1●IMで交わされるメッセージの例
写真1●IMで交わされるメッセージの例
電子メールとは異なり、短いメッセージをリアルタイムにやりとりできる。電話に似ている。

 インスタント・メッセージ(Instant Message/Instant Messaging)は,略して「IM(アイエム)」と呼ばれる。エンドユーザーが使うクライアント・ソフトのことを「インスタント・メッセンジャー」や「メッセンジャー」などという。これも「IM」と呼ばれる。現在、よく使われているメッセンジャーはマイクロソフトの「Windows Messenger」(Windows XPに標準)やWindows Live Messenger(Windows Vistaに標準)。Yahoo! JAPANが提供する「Yahoo!メッセンジャー」やGoogleの「Google Talk」も人気がある。

 インスタント・メッセンジャーはずいぶん前には「チャット・ソフト」などと呼ばれていた。メールのようにかしこまった長い文ではなく、「今日はどうだった?」「××さんから電話がありました」「明日の夜、時間ある?」といった口語のような短いメッセージを簡単に送る仕組みとして開発された(写真1)。

 IMは、テキストを相手に送信するという点では電子メールに似ているため、利用したことがない人には違いやメリットがよくわからないかと思う。確かに似たところはあるが、細かいところではずいぶんと違いがある。

図2●プレゼンスはサーバーが管理
図2●プレゼンスはサーバーが管理
ユーザーのプレゼンスが変更されるとサーバーに通知され、サーバーが各ユーザーに通知する。
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 一つ目の違いは、IMが自分の在・不在を互いに知らせることができる「プレゼンス」機能を装備していること(写真2)。ユーザー同士が離れていても、ネットワークの向こう側でPCを立ち上げてソフトを利用しているかどうかなどがリアルタイムに確認できる(図2)。通常、プレゼンスは「オンライン/オフライン」といったメッセージや顔文字などで表示される。最近では、クライアント・ソフト上からいまの状態を文字などで自由に入力/設定できるものもある。

写真2●プレゼンス機能
写真2●プレゼンス機能
自分のステータスを相手に知らせることができる。

 相手の状態がわかれば、コミュニケーションが効率化できる。相手が在席中とわかれば急ぎのやりとりが可能と判断できる。電話がかかってきたときにその担当者が離席中とわかれば、電話を無用に転送することなく、即座に伝言を受けるなど効率的に業務が進められる。また、相手が不在なのにメッセージを送って、無駄に返信を待ったりすることがなくなる。

 二つ目は、メッセージのリアルタイム性である。IMの場合、メッセージを送信すると、直後に相手の画面にウインドウがポップアップしてメッセージが表示される(図3)。一方の電子メールの場合、クライアントからメール・サーバーにメールを取得しにいかなければならない。たいていは5分おきや15分おきでチェックするようにメール・ソフトを設定しているはず。

図3●IMはリアルタイムにメッセージを届ける
図3●IMはリアルタイムにメッセージを届ける
電子メールは5分おきや15分おきなど、電子メール・ソフトウエアがサーバーに問い合わせたときに初めてメールが届いているかがわかる。

図4●IMでメッセージの送信、チャットの手順(Yoctoの例)
図4●IMでメッセージの送信、チャットの手順(Yoctoの例)
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 IMでメッセージを送る場合、まずクライアント・ソフトのメンバー・リストから会話したい相手を選び、クリックする(図4)。電子メールのようなメッセージ・ウィンドウが表示されるので、そこにメッセージを入力して「送信」ボタンを押す。送信とほぼ同時に、相手のデスクトップ上にメッセージがポップアップで表示される。そのとき相手がクライアント・ソフトにログインしていなければ、次回ログインしたときにそのメッセージは表示される。また、携帯電話とメッセージをやりとりできるIMサービスもある。

 三つ目の特徴は、複数のメンバーでリアルタイムにテキストのやりとりができること。一般に「チャット」と呼ばれる機能である。チャットを利用すれば、同じ画面を通じて複数のユーザーでメッセージによる会話ができる。メッセージは、ユーザー名と併せて、時系列に追加、表示されていく。簡単な打ち合わせの代わりに使える。

 メンバー・リストのなかからチャットをしたい相手を選んで1対1で会話を始め、次々にメンバーを招待して増やしていくことができる。招待されたからといって、必ず参加しなければいけないわけではない。招待されても拒否できるし、チャットの途中で「いま忙しいので」と退室しても構わない。電子メールでも複数の相手に送信できるが、チャットのようにリアルタイムにディスカッションすることはできない。

 IMと電子メールの違いはほかにもあるが、代表的な違いは以上の3点に集約される。電子メールも個人対個人をつなぐコミュニケーション・ツールであるが、IMはよりその性質が強く、リアルタイム性が高いツールである。なお、電子メールは配達を待つという意味で「郵便型」、IMはリアルタイムという意味で「電話型」といわれている。