市谷:どうすれば,芋づる式に情報を探られるのを防げるんでしょうか?

室長:まず最初に考える必要があるのは,違うメディアに同じアカウント名を用いてはいかんということじゃな。

市谷:同じアカウント名だと探し当てやすいから,メディアごとにアカウント名を別にするってことですか。

室長:そうなんじゃが,別にするだけじゃだめなんじゃよ。

市谷:どういうことですか?

室長:例えばyotsuyaという名でブログを書いて,nakanoという名でSNSを利用していたとしよう。両方にichigayaという常連・友達がいたらどうじゃ?

市谷:…なるほど。人間関係も相互乗り入れしたらまずいんですね。

室長:別にするなら,人格や人間関係も別,というのが理想的じゃな。しかし,これはなかなか難しいぞ。

市谷:そこだけの人格や人間関係を作り上げるということですか…。そうすると,オフ会も危なそうですね。

室長:オフ会というのは,実際に会う会合のことか? そりゃ危ないのう。誰が来ているかわからんしの。

市谷:オフ会で飲んだりすると,口も軽くなりそうですしね。別人格型の運営は,ハードルが高そうだなあ。

室長:もし同じアカウント名にするのなら,関連付けて調べられることを前提に,全体で情報をどこまで出すかを考えたいところじゃな。

市谷:それも難しそうですねえ…。

室長:いや,そうでもないぞ。

 個人情報の流出を防ぐには,メディアごとにアカウント名を分け,各メディアを切り離したうえで,それぞれにどこまでの情報を書くかを加減するのが理想だ(図3)。複雑な運用は無理だというのであれば,最も気を許してしまいそうなメディアを基準にするとよい(図4)。

図3●利用する複数のメディアを完全に分けてたどれないようにする
図3●利用する複数のメディアを完全に分けてたどれないようにする
関連付けられないようにするには,(1)相互にリンクしないようにし,(2)アカウント名を別にし,(3)招待する人間を分ける必要がある。

図4●漏れることを前提にして書き込む内容に気を付ける
図4●漏れることを前提にして書き込む内容に気を付ける
複数のWebページを関連付けられないように完全に独立させるのは難しい。安全策をとるなら,最も情報が漏れやすいページを基準に書き込む情報を考える必要がある。
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 SNSは紹介・招待制を取っているところが多い。となると基本的には,いつも周りに居るのは「知り合い」か「知り合いの知り合い」である。それに安心して,ついプライバシーを書いてしまうことも多いようだ。その「安心感」を取り払い,見知らぬ人にいつ見られても良いような書き方にする。これを心がけるだけでも,知られてしまう情報の濃度が違ってくるはずだ。

市谷:仲間内相手には,もっと気軽に書き込みたいんですけどねえ。

室長:そうはいっても,ブログと関連付けられる可能性がある以上,用心したほうがよいじゃろう。

市谷:そうですよねえ…。うん? ちょっと,待ってください。関連付けられにくい携帯電話専用のSNSならどうです?

室長:確かにそれならリンクは付けにくいし,パソコンを駆使して個人情報をかき集めるやつらにとっては,ハードルが高くなるじゃろうな。

携帯電話専用のSNSを使う手も

 気の置けない仲間と個人的なことも含めて雑談したいのなら,携帯専用のSNSを使う手もある(図5)。パソコンからアクセスできないのは不便だが,その分情報流出の危険は小さい。携帯電話だけで,個人情報を収集するのは手間がかかるからだ。

図5●携帯電話専用のSNSは情報が漏れにくい
図5●携帯電話専用のSNSは情報が漏れにくい
個人情報を収集・分析するツールが充実していない。このため,万一のときに被害が拡大しないで済む可能性が高い。

 携帯電話だけであれば,検索サービスで探られたり,複数ウインドウを開かれて照合されることはない。多機能でない分,安全でもあると言えるのだ。

 ただ,携帯電話用のSNSならどれでも安心できるわけではない。携帯用のSNSの多くは,パソコンでもアクセスできるようになっている。パソコンからでもアクセスできるサービスであれば,携帯電話からアクセスしても情報漏えいの危険はパソコンからアクセスするのと変わらない。情報漏えい対策として,理想的には携帯電話「専用」のSNSを選びたいところだ。また,携帯電話専用のSNSであっても,気の置けない仲間「以外」が参加できないようにするしくみがあるかどうかを,確認しておく必要はある。

市谷:…なるほど。これからは情報の出し方に気を付けるとして,今回のブログのように炎上してしまったらどうすればいいんでしょうか。

室長:本格的に炎上してしまう前に「リセット」するしかないじゃろうなあ。

市谷:「リセット」? それどういう意味ですか?

室長:一からやり直すということじゃよ。