写真11 レストランが集まる通りと工場間にゴミ箱を設置。工場内の改善意識を近隣でも徹底できるように配慮
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 車載通信機器などを製造・販売するヨコオが、日本での成功体験をもとに中国でトヨタ流改善を始めたのは2006年。その中心人物である多胡 一男氏に、取り組みの詳細をほぼリアルタイムでメルマガに寄稿してもらった。1年前の話ではあるが、現地に改善活動を根づかせるためには何が課題となるのかなど、中国で改善に取り組もうとする企業にとっては大いに参考になるだろう(日経情報ストラテジー編集部)。

多胡 一男
東莞友華汽車配件有限公司(ヨコオの中国法人) OJT-Sプロジェクト 経理担当


 皆さん、こんにちは。中国からの第11回となります。
(原文は2007年3月21日付け日経情報ストラテジー・メール)

 今回は、2007年2月末時点におけるOJT-S(トヨタ生産方式に基づく職場改善・人材育成)進ちょく状況をお話しいたします。中国では陰暦を用いるのが一般的で、我が友華汽車でも旧正月に合わせて連休(2月16日~24日)を設定しています。そのため、月間の稼働日は通常より5日少なく、またメンバーも帰省するという状況の中、カイゼン活動も効率よく作業を進めなければなりませんでした。

■カイゼン活動

【1】倉庫カイゼンチーム

 「かんばん」対象部品の拡大に追われています。

(1)倉庫~組み立て工程:部品払い出し指示かんばん
 300を超える部品の「かんばん」の作成と現物への取り付け、実際に「かんばん」を使った部品引き取り方式の導入がありますが、ここまでは準備段階です。導入後の運用を見ると、現場での「かんばん方式」の理解が人によってバラツキがあったり、フォロー不足があったりと、多くの課題が見えてきました。

(2)成形工程~組み立て工程:他部署との部品引き取りかんばん
 マイクロアンテナに成形部品を供給する部署との間で使用する「かんばん」のため、運用を間違うと部品不足につながってしまうので、運用ルールの精度を上げ「かんばん」を扱う作業者への落とし込みが求められます。

(3)導入後のフォローの大切さ
 「かんばん」は友華汽車では未経験な仕組みのため、「繰り返し教える→教えたことが守られているか確認する→その時々の問題に即対応しカイゼンする」、この繰り返しで定着化を進めています。しかしながら、現状では「かんばん」が「かんばんポスト(=外れたかんばんをいれる箱)」にしばらくあったり、「ストアー(=工程近くの部品棚)」に「かんばん」のない部品が置いてあったりと、まだまだ定着には時間がかかりそうです。「決まりごとを作るだけなら誰でもできる。導入後の結果をフォローして、問題点を潰して初めてカイゼンといえる」と、日本でトレーナーに言われたことを思い出しました。

【2】マイクロアンテナ

 第2期も終盤となり、OJT-Sを職場内すべてに展開すべく最後の追い込みに入っています。現場のOJT-Sの理解度は活動当初から比べるとかなり浸透し、第3期以降は現場主導での維持・向上が進められそうです。特に、生産課の李課長は教育・改善活動に熱心で、職場全体がこれからどう成長するのか楽しみです。

【3】GPSアンテナ

 5Sのうち、整理・整頓については「今使う物以外は作業台の周辺にない」状態が保てるようになりました。大分目標に近づいていますが、残りの清潔・清掃・しつけはまだまだ満足できません。一例をあげるなら、ライン以外の人が近づくと、そちらを向いてしまう光景をまだまだ見かけます。標準作業は設定を終え、現場への定着を進めています。ただ製品が高周波帯製品であるため、検査する検査器との相性など人に起因しない点から微妙なバラツキが発生することもあり、可動率が安定しない状態です。こういう状況下においても、手待ちを少しでも無くす工夫に追われる日々です。

 ここで、ちょっとひと息……

 中国人の昼休みの過し方を紹介します。もちろん、社内に食堂があり昼食をとることができますが、工場周辺の食堂や屋台(日本のファストフード店のようなテークアウト式)へ出かける人が多くなってきています。食文化が多様化して、食べたい物が美味しく食べられる環境になってきています。昼食後は、ほとんどの人が自職場の休憩所へ戻りますが、大体寝ています。

【4】中継コード

 年末に加工エリアの仕向け先別レイアウトを実施した後、GPSアンテナへケーブルを供給するブロックへ、倉庫~組み立て工程間の「部品払い出しかんばん」を導入中です。その前提として、部品の種類・使用数・ストアー在庫数などの「かんばん」に必要な情報を整理し、併せて部品の受け手となる組み立て工程の標準作業設定と現場定着の指導を進めています。

 ケーブル組り付け工程で進めている「箱詰め作業ゼロ化」ですが、モデル工程では組み付けから検査まで一貫した加工ができるようになりましたが、さて横展開となると多機種を生産するラインが多く、製品そのものの大きさ(長さ、太さ)が違うことがネックとなり、なかなか進んでいません。

■赴任生活

中国正月事情

 今年は2月18日が旧正月の元旦に当たるため、14日ころから民族大移動が始まりました。従業員の多くは地方出身者のため、会社の休日前後に有給休暇をとり帰省する人たちがかなり出ています。移動手段は長距離バスか鉄道が一般的で、ギュウギュウ詰めの状態で1~3日くらいの移動をしながら故郷へ帰っていきます。ちなみに鉄道の長距離便には医師か看護士が乗り込んで、急患に備えていると聞きました。私は今回の連休を利用して日本へ一時帰国し、毎年参拝している神社に行ったり買い物をしたりして、1カ月半遅れの正月を家族と楽しんで来ました。

では、今回はこの辺で。


多胡 一男(たご かずお)
1981年、株式会社ヨコオ(車載通信機器・無線通信機器などの製造・販売)入社。2006年6月より同社中国工場である東莞友華汽車配件有限公司にてOJT-Sプロジェクト 経理担当。ヨコオでは、人事部門にて、人事システム革新テーマ等に取り組む。その後、車載通信機器生産部門責任者に就任。2004年には韓国での合弁会社の製造立ち上げ責任者として駐在。2005年からはOJT-Sプロジェクト(トヨタ生産方式に基づく職場改善・人材育成プロジェクト)に参画し、製造現場のものづくりシステム改善に取り組み、現在同社中国工場への展開で奮闘している。同社のWebサイトはこちら