日本国内だけで,毎年50~60万台が生産・出荷されているサーバーの電力消費量は,毎年増加する傾向にある。サーバーが増加することは,それ自身の消費電力を増加させるだけではなく,サーバーを冷却する冷房設備の増設も招き,さらなる電力消費につながってしまう恐れがある。

 そこで,サーバーの消費電力を減らす取り組みが始まっている。世界で大きなシェアを占める,米IBM,米HP,米デルはもちろん,NEC,富士通,日立製作所といった国内大手メーカーも,研究開発に着手し始めた。特に,「PCサーバーは処理負荷が低い状態でも多くの電力を消費する傾向がある。メインフレームやUNIXサーバーと比較すると,消費電力削減の余地は大きい」(日本IBM システム製品事業 藤本司郎氏)。

2つのアプローチで省電力化

 サーバーの消費電力を削減するアプローチは,大きく2つある(図1)。1つは,サーバーを構成するプロセサやハードディスク,ファン,電源装置などの各部品に,より省電力なものを採用すること。もう1つは,サーバーの構造を見直して電力利用の効率を高めることである。

図1●サーバーの省電力化には,大きく2つのアプローチがある
図1●サーバーの省電力化には,大きく2つのアプローチがある

 部品の見直しといっても,現在,部品からサーバー製品までを一貫して製造しているメーカーは,ほとんどない。プロセサはもちろん,ディスクや電源など,部品のほとんどは,部品メーカーが生産したものを採用し,メーカーはそれを使ってサーバーを組み立てている。

 つまり,低廉化が進むPCサーバー製品においては,省電力部品を新たに開発するのは難しいのだ。部品メーカーがメーカー向けに提供する部品の中から,うまく部品を選択し,ユーザーが求める製品を完成させるところが,メーカーの腕の見せ所である。国内メーカーは,従来のサーバー製品に省電力な部品を採用し始めている。

 日立は,ラックマウント型のPCサーバーに省電力型部品を採用したものを,「HA8000-esシリーズ」として2007年12月に出荷している。低電圧Xeonプロセサと,2.5インチ型ハードディスクを採用したことが特徴である。外観は変わっていない。日立の試算によると,標準モデルに対して約23%消費電力を削減したという。電力コストの面では,5年間で約8万円を節約できる計算だ(図2)。

図2●日立製作所のHA8000シリーズには「エコサーバ」と呼ばれるモデルがあり,見た目は同じでも消費電力が異なる
  消費電力 5年間の電気料金
通常モデル 約700W 約30万円
エコサーバ 約550W 約22万円

図2●日立製作所のHA8000シリーズには「エコサーバ」と呼ばれるモデルがあり,見た目は同じでも消費電力が異なる
数値は,日立による試算

省電力な部品を使う

 NECも,省電力PCサーバーの出荷を始めている。2007年10月に出荷を開始した,1Uスペースに2台ラックマウント可能な小型サーバー「Express5800/i10Rc-1h」がそうだ。主にデータセンターや大企業など,省電力のPCサーバーを多く利用するユーザー向け製品である。最大の特徴は,Core 2 Duo T7400(2.16GHz)などのノートPC用のプロセサを採用していること。「Webサーバーなどの用途では,ノートPC用のプロセサでも性能は十分」(NEC ITプラットフォーム販売推進本部の泓 宏優グループマネージャー)という判断だ。

 また2.5インチ型SASハードディスクを採用することで,さらに省電力化した。同社の実機デモによると,同程度の処理性能の1Uサーバー機と比較すると,消費電力は約2分の1にまで削減できているようだ(写真1)。

写真1●NECの1Uサーバーとハーフ1Uサーバーの消費電力比較
写真1●NECの1Uサーバーとハーフ1Uサーバーの消費電力比較
左が1Uサーバー,右がハーフ1Uサーバー

 「部品一つひとつを見直すことで,約40%の電力を削減することが可能だ」と富士通はみる。2008年に出荷を予定するPCサーバー「RX200」の後継機では,現行製品が446Wである消費電力を,268Wにまで減らすことを目指す。やはり,より省電力なプロセサを採用するほか,メモリーに低消費電力DIMMを使うことも検討中である。

 また,富士通も2.5インチ型ハードディスクを採用する。同社は,ハードディスクを3.5インチから2.5インチに変更することで,アイドル時の消費電力を約半分の5~6Wに抑えられるとみる。今後は,全ラックマウント型サーバー,ブレード・サーバーで2.5インチ型ディスク搭載モデルを提供する予定だ。