サーバーやストレージなど,個別の機器の省電力化が進む一方,もっと大きな効果が見込めそうなのは,ハードウエアが備える仮想化機能や,VMwareなどの仮想化ソフトを使ったサーバー統合である。個別の機器から少しずつ消費電力を削減するよりも,動かす機器の数を削減するほうが効果が大きいとみられているからだ。

 これまで仮想化技術によるサーバー統合は,システム運用の効率化や,ハードウエア依存からの脱却が主な目的になることが多かった。消費電力を削減する面でも大きな効果が期待できることは,企業システムの仮想化への動きを後押しすることになりそうだ。

サーバーのCPU使用率を高める

 サーバーを仮想化技術を使って統合すると,サーバー内部の部品を共有するため,電力効率が高まる。特にその効果が現れるのはCPUである。CPUの使用率が10~30%と低いサーバーを,1台のサーバーに統合し,CPUの処理能力を無駄なく使う(図1)。

図1●プロセサ使用率が低いPCサーバーは,サーバー統合による電力削減効果が大きい
図1●プロセサ使用率が低いPCサーバーは,サーバー統合による電力削減効果が大きい

 統合前は,消費電力が500Wのサーバーを4台利用していたとしよう。同じ数の仮想マシンを動かすために,処理性能が高いサーバーを導入し,1台あたりの消費電力が増えたとしても,合計では消費電力削減を実現できる計算だ。

 サーバーのプロセサは,使用率によって消費電力が異なるが,大きな差はない。IBMの調査では,使用率100%時に91WだったXeon 2.0GHzのCPUは,アイドル時つまり使用率が0%に近い状態でも70Wだったという。

80%のエネルギー削減を目指す事例も

 実際に,仮想化によるサーバー統合で,省電力化を実現する事例も増えている。

 ホンダは,仮想化技術を使ってサーバーを集約し,運用コストと消費電力の削減に着手することを明らかにしている。個別のサーバーで動作している購買システム,営業系システム,人事システムなどを集約する検討を始めた。サーバーの処理性能を1.5倍まで高め,CPUの使用率を50~80%に引き上げる(図2)。サーバー統合を実施しなければ増えるであろうサーバー数を40%削減し,その分消費電力を抑えるという。

図2●ホンダ,IHI,米IBMなど,サーバー統合による電力削減の先進事例が相次ぎ生まれている
図2●ホンダ,IHI,米IBMなど,サーバー統合による電力削減の先進事例が相次ぎ生まれている

 また,製造業大手IHIは2007年9月から半年をかけ,会計システムのサーバーを統合した。IHIグループの「統合会計システム」をバージョンアップするに当たり,IBMの「System p5」が備える仮想化技術を使って,UNIXサーバー13台を2台に統合した。これにより,消費電力は約4割,二酸化炭素(CO2)排出量は年間約30トン削減できるとみる。

 大規模で知られるのは,米IBMが社内の会計システムをSystem zに統合したケースである。同社グループの約35万人が利用するグローバル会計システムである。2007年5月に開始した「Project Big Green」の一環として,3900台あるLinuxサーバーを,System z約30台に移行する。

 System zの仮想化技術を使い,WebSphereで動作するJavaアプリケーションやSAPのパッケージを使ったアプリケーションなどを移行する。エネルギー消費量の削減率は,80%にも達するという。このほかに,ソフトウエア・ライセンス費や運用コストも削減できる見込みだ。