図1●データセンターにおける電力消費の割合
図1●データセンターにおける電力消費の割合
 情報システムに関連する消費電力が増加する大きな要因の一つは,発熱である。前回提示した米APCのデータによると,データセンターやサーバー室で消費される電力の約45%は,空調などの冷却用装置によるものである(図1)。IT機器や電源設備だけでなく,冷却用設備でも,省電力化を進める必要がある。

 背景にあるのは,サーバーやストレージの発熱量が増大していることである。ブレード・サーバーのように,小さいスペースでも多くのサーバーを稼働させられるIT機器は,それだけ発熱量が多い。局所的に温度が高いスペース「熱だまり」が発生したり,サーバー室全体の温度が上昇したりする。それを冷却するために,これまでより多くの冷却装置が必要になり,消費電力増加につながっている。

ラック単位で冷却

 データセンターやサーバー室の冷却が非効率である要因は,(1)サーバー・スペースによって温度のムラが大きいこと,(2)サーバーが吸引する冷気と排出する暖気の分別ができていないこと,の2つが大きい。サーバーなどのIT機器が高温な空気を吸い込むと,さらなる発熱の原因になる。

 最も効果的なのは,空気の循環や温度管理を意識して,ファシリティの設計を見直すことである。実際,データセンターをこれから建築するITベンダーにはそのような動きがある。しかし,既存のデータセンターやサーバー室ではそうもいかない。そこで,ITベンダーが打ち出しているのは,サーバーやラックの単位での冷却の効率化である。

 具体的には,ラックやラック内部に冷却用装置を組み込み,冷却効率を上げるというものである。ブレード・サーバーなどの周囲に生じた熱だまりの周辺に設置することで,局所的な冷却効率を高め,熱だまりを解消する。APCジャパン,日本IBM,日本ヒューレット・パッカード(HP)などの製品がそれだ(図2)。

図2●ラックを集中的に冷却する装置が相次ぎ登場している
図2●ラックを集中的に冷却する装置が相次ぎ登場している
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 ただし,それぞれ少しずつ方式が異なる。APCジャパンの「InfraStruXure InRow RC/RP」は,ラック間に設置し,背後の暖気を冷却してラックの全面に送り出す冷却用装置である。それに対して日本IBM「Rear Door Heat eXchanger」は,サーバーの背後にラジエータを取り付け,暖気をすぐに冷却する。日本HPの「HPモジュラー クーリング システム」は,ラック内部を密閉して冷却する方式を採る。