図1●データセンターにおける電力消費の割合 |
背景にあるのは,サーバーやストレージの発熱量が増大していることである。ブレード・サーバーのように,小さいスペースでも多くのサーバーを稼働させられるIT機器は,それだけ発熱量が多い。局所的に温度が高いスペース「熱だまり」が発生したり,サーバー室全体の温度が上昇したりする。それを冷却するために,これまでより多くの冷却装置が必要になり,消費電力増加につながっている。
ラック単位で冷却
データセンターやサーバー室の冷却が非効率である要因は,(1)サーバー・スペースによって温度のムラが大きいこと,(2)サーバーが吸引する冷気と排出する暖気の分別ができていないこと,の2つが大きい。サーバーなどのIT機器が高温な空気を吸い込むと,さらなる発熱の原因になる。
最も効果的なのは,空気の循環や温度管理を意識して,ファシリティの設計を見直すことである。実際,データセンターをこれから建築するITベンダーにはそのような動きがある。しかし,既存のデータセンターやサーバー室ではそうもいかない。そこで,ITベンダーが打ち出しているのは,サーバーやラックの単位での冷却の効率化である。
具体的には,ラックやラック内部に冷却用装置を組み込み,冷却効率を上げるというものである。ブレード・サーバーなどの周囲に生じた熱だまりの周辺に設置することで,局所的な冷却効率を高め,熱だまりを解消する。APCジャパン,日本IBM,日本ヒューレット・パッカード(HP)などの製品がそれだ(図2)。
図2●ラックを集中的に冷却する装置が相次ぎ登場している [画像のクリックで拡大表示] |
ただし,それぞれ少しずつ方式が異なる。APCジャパンの「InfraStruXure InRow RC/RP」は,ラック間に設置し,背後の暖気を冷却してラックの全面に送り出す冷却用装置である。それに対して日本IBM「Rear Door Heat eXchanger」は,サーバーの背後にラジエータを取り付け,暖気をすぐに冷却する。日本HPの「HPモジュラー クーリング システム」は,ラック内部を密閉して冷却する方式を採る。