「デュアル・プロセサを搭載したサーバーは電力消費450Wのうち160W,約35%を電力変換でロスしている」(米インテルなど)――。「データセンターにおいては,電源設備による電力消費は約23%にのぼる」(米APC)――。サーバーやデータセンターの消費電力を削減するためには,電源に関するロスを縮小する取り組みは不可欠だ(図1)。

図1●データセンターやサーバーの電力消費の中で,電源によるものの割合は大きい
図1●データセンターやサーバーの電力消費の中で,電源によるものの割合は大きい
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 電源部分でロスした電力の多くは,熱になって失われる。それを冷やすために,冷却装置が必要になり,また電力を消費する悪循環が生まれている。IT業界で消費電力削減に取り組む業界団体,「Climate Savers コンピューティング・イニシアチブ」や「The Green Grid」も,電源のロスを縮小することを大きな課題の1つに挙げている。

電源効率が高い装置を認定

 特にロスの割合が大きいのは,サーバーなどIT機器の電源装置部品である。せっかくIT機器に供給した電力が,AC(交流)からDC(直流)への変換や変圧の際に失われ,プロセサやディスクに供給される電力が小さくなってしまっている。電源の変換能力を改善してロスを小さくすれば,これまでより小さい電力でIT機器を動かすことができるようになるわけだ。

 こういった状況を受けて,電源装置の電力効率を高める動きが活発化している。その1つが,環境コンサルティング会社である米エコス・コンサルティングが運営する電源の認証プログラム「80 Plus」である。電源効率が80%を超える電源を認証する。2004年に始まった同プログラムに参加する電源メーカーは,200社を超えた。

 特にパソコン向けの電源装置では,80 Plusの認定を受けた製品が増えている(図2)。従来は60~70%程度の製品が多かった。「以前から85%以上の電源効率を実現した製品はあったが,ごく少数だった。2007年あたりから,上位の電源装置製品の大部分が80 Plus認証を受けた製品になってきた」(パソコン部品の販売を手がけるリンクス・インターナショナル 商品企画部の西條結城氏)。米ヒューレット・パッカード(HP)などのメーカーも,80 Plus認証を取得した電源を部品として採用したパソコンやワークステーションの出荷を始めている。

図2●パソコン用電源装置は上位製品を中心に,米国の業界団体「80PLUS」によって電源効率が80%以上であることを認定された製品が増えている 80PLUS 米Antecの「EARTHWATTS 」 台湾Enermax Technologyの「INFINITI-JC」
図2●パソコン用電源装置は上位製品を中心に,米国の業界団体「80PLUS」によって電源効率が80%以上であることを認定された製品が増えている
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 サーバー用の電源装置は,さらに上の電源効率を実現しようとしている。「第6回ブレード・サーバー」で言及したように,日本IBMや日本HPは90%近い変換効率の電源を採用しているほか,国内ベンダーも90%以上の変換効率を目指し,電源装置の開発を開始している。