省電力化の波が押し寄せているのは,何もサーバーだけではない。ストレージにも省電力化の動きがある。各ベンダーが,消費電力削減に効果がある新技術を搭載した機種の出荷を開始したほか,ハードウエアとしての省電力化にも力を入れ始めた。

 米ガートナーが実施した調査によると,データセンター内のIT機器が消費する電力のうち,約40%がサーバーで,約37%がストレージであるという。「企業が管理するデータは増加傾向にある。年率50~60%というデータもある」(富士通 ストレージシステム事業本部の竹前元仁プロジェクト部長)ことを踏まえると,ストレージの省電力化も重要である。

 ストレージの省電力化には,大きく2つの方向性がある。1つは,ストレージ機器そのものの消費電力を削減すること。もう1つは,新技術を利用してストレージ装置の数を削減することである。

MAIDで15~40%の電力削減

 ストレージ機器を省電力化する目的で,主流になりつつある技術が「MAID(Massive Arrays of Inactive Disks)」である。NEC,富士通,日立製作所,米コパン・システムズなどが,MAID技術を使ったストレージ製品を提供している。

 MAIDは,アクセス頻度が低いディスクの回転を止めることにより,消費電力を削減する技術である。従来のストレージは,内部のハードディスクを常時回転させていた。しかし,企業ユーザーがアクセスするデータには偏りがある。保存しているデータの中には,頻繁に読み書きするデータもあれば,年に数回しかアクセスがないデータもある。

 そこでMAID対応のストレージは,アクセス数が小さいデータを保存するドライブのディスク回転を止め,必要な時だけ動かすようにする(図1)。また,バックアップ用のストレージなどはスケジュール機能と組み合わせ,夜中のバックアップ処理の時だけディスクの電源をオンにするといったことも可能になる。

図1●MAID(Massive Arrays of Inactive Disks)技術を搭載したストレージは,必要に応じてディスクの電源をオン/オフできる
図1●MAID(Massive Arrays of Inactive Disks)技術を搭載したストレージは,必要に応じてディスクの電源をオン/オフできる

 所有するデータの内容や使いかた,ストレージの設定などによって効果は異なる。ただ,「最大で30%の消費電力を削減できる」(NEC),「最大40%削減する」(日立),「15%削減が可能」(富士通)と,大幅な削減効果が期待できるという。

バックアップ装置としてテープを使う

写真1●日本IBMの「System Storage TS2340 テープ・ドライブ」は,120Mバイト/秒の転送速度を実現
写真1●日本IBMの「System Storage TS2340 テープ・ドライブ」は,120Mバイト/秒の転送速度を実現
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写真2●テープ・ドライブを組み込んだ,日立製作所のディスク・アレイ「Hitachi Tape Modular Storage 1000」
写真2●テープ・ドライブを組み込んだ,日立製作所のディスク・アレイ「Hitachi Tape Modular Storage 1000」
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 テープ・ドライブ装置を見直す動きもある。ディスクと異なり,テープ装置はデータを読み書きする時だけモーターを駆動させるオフライン方式であるため,電力の消費効率がよいのだ。

 米IBMは,テープとハーディスクのランニング・コストを試算。250Tバイトの容量でSATAハードディスクとLTO4テープ・ドライブを比較すると,10年間の電力コストはSATAハードディスクが805ドル,LTO4テープ・ドライブは40ドルと,後者のほうが20倍電力コストが安いという。テープの交換などの作業コストを含めても,テープのほうがコストは低い。

 高速化,大容量化が進み,エントリ・モデルでも,バックアップ用途ではディスクとそん色ない機種がある。例えば,日本IBMが2007年5月に出荷したLTO3テープ・ドライブ装置「System Storage TS2340 テープ・ドライブ Express Model」は,転送速度は最大120Mビット/秒,最大1.6Tバイトの保存容量である(写真1)。

 日立は,テープ・ドライブを組み込んだディスク・アレイ「Hitachi Tape Modular Storage 1000」の出荷を2007年12月に開始した(写真2)。最新のバックアップ・データのみハードディスクに保存し,旧世代のバックアップ・データはテープに保存する。ハードディスクだけを使うアレイ装置と比較すると約40%の電力を削減できるという。