「初音ミク」とは誰か

 ネット界ではすでに話題となっているこの名前を,実在の人物と思い込んでいる方もまだいるに違いない。初音ミクとは2007年8月31日にクリプトン・フューチャー・メディアが発売した「VOCALOID 2」というボーカル音源ソフトウエアのラインナップ名だ。コンピュータにメロディと歌詞を入力してやれば,その通りに歌わせることができるという優れものである。

 VOCALOID 2はDTM(デスクトップミュージック)編集ツールのインタフェース画面を使って歌ってほしい音の高さや長さを指定すると,あらかじめ収録した人間の声のサンプルデータをその指定に沿って再生する音声合成システムである。一つの音符に対して発声させたい歌詞を一音ずつ入力して再生すると,初音ミクが歌いだすらしい。別に用意したバックトラック(伴奏)と合わせれば,本物の歌手が歌っている楽曲のようだ。いわば,誰でも“バーチャルアイドル”をプロデュースできるのだ。

 盛り上がりのほどを確認してみよう。2007年11月26日現在,YouTubeでタグ検索した際ヒットする投稿ビデオの数およそ2800。ニコニコ動画にいたっては1万276という投稿数の多さだ。投稿された動画は初音ミクの歌う楽曲を収録したクリップである。発売日からたったの3カ月でこれだけネット・コミュニティを賑わせているのだ。

 これらの動画コミュニティに投稿されたコンテンツの多くは既存の楽曲を歌わせた音声データ中心の映像だが,中にはリアルな初音ミクの3D CGを伴うPV(プロモーションビデオ)もある。高度なオリジナルソングを作り出すユーザーも出現し,そのクオリティは「仕事でもないのに,よくぞここまで」と多くの視聴者を驚かせている。

「みっくみく」にしてもらおう

 そんな初音ミク,いや「VOCALOID2」に触ってみるべく,さっそくソフトウエアを入手,インストールを試みた。

 私も「みっくみく」にしてもらえるのだろうか。期待が膨らむ。

※編集部注:「みっくみく」は,初音ミクが歌ったオリジナル楽曲「みくみくにしてあげる♪」(ニコニコ動画にアップされている)から来ており,初音ミクに夢中になることを表す言葉。ちなみに「みくみくにしてあげる♪」は2007年11月27日時点で再生数189万超,コメント数45万超を記録している。

 パッケージに記載の動作環境を見ると,CPUはPentium4 2.8GHz / Athlon 64 2800+以上を推奨とのこと。さらに推奨RAMは1GBと,要求仕様はなかなかハイスペックだ。音声合成システムとユーザー・インタフェースであるVOCALOID 2のほか,初音ミク本体とも言うべきサンプリング音声のライブラリがあるので必要なハードディスク空き容量は2GBにもなる。幸い筆者は過去にWindows Vista関連記事を書かなければならなかった都合上,Vista用のハイスペックマシン(Intel Core 2 Duo 1.8GHz RAMは2GB)を購入している。こちらにインストールするとしよう。

 早速インストーラを実行すると,びっくりするほど大きな初音ミクのイラストがデスクトップいっぱいに現れた(図1)。思わず照れて「こんにちは」と言ってしまったほどだ。すぐにセットアップタイプを選ぶウィザードが出てくる(図2)。「すべて」を選ぶが,但し書きに(ディスクの空き容量をほとんど使用します)とあり,なんだかまるで全部使い切りますよと言われているようで怖い。イラストを見つめて心を落ち着かせる。

図1:インストーラを起動すると現れる初音ミクのイラスト。パッケージのイラストと同じものだがその大きさに驚く。ちなみに腕の「01」という数字は,VOCALOID 2ベースのキャラクター・ボーカル・シリーズの第1弾であることを表す(編集部注:袖付近の模様は,ヤマハの往年のデジタル・シンセサイザー「DX7(初代)」のコンソールパネルをあしらったもの)

図2:セットアップタイプを選ぶウィザード。もちろん空き容量が大きければ,ほとんど使われてしまうことにはならないが

 「次へ」をクリックして実行すると数分でインストールが完了した。ソフトのアクティベートを済ませると「おめでとうございます!」の文字が(図3)。「オーナーマニュアルを注意深くお読みになりVOCALOID2ライフを楽しんでください!」とダイアログが出た。なるほど添付の「実践ガイド」には「“歌の音程/音符のつながり”を改善する歌唱スタイル調整の手順」など作り方のコツが満載だ。まずはマニュアルを注意深く読むことからはじめたほうがよさそうである。

図3:インストール終了を告げるダイアログ。オーナーマニュアルを注意深く読むようにとアドバイス

初音ミクを試してみる