UTMは製品によって価格体系が異なるので,コスト比較はかなり複雑だ。本体の価格は,CPUの性能やメモリー・サイズ,同時セッション数といった機器のスペックで決まる。ただし製品によっては,各種セキュリティ機能がオプション扱いになる(図1)。

図1●UTMの価格は装置だけのものと追加料金が発生するものがある
図1●UTMの価格は装置だけのものと追加料金が発生するものがある
UTMは装置の価格だけのものと,追加機能の料金がかかるものがある。他社のスキャン・エンジンを搭載してシグネチャの更新が発生するものは,クライアント数に応じた年間契約になる場合が多い。
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 UTMの価格体系を大まかに分けると,(1)各種セキュリティ機能がオプションとして年間契約で提供されるケース,(2)それに加えてユーザー数によって価格が設定されているケース──の二つがある。

大規模ならユーザー無制限が得

 実際にどのような価格体系があるのかを見てみよう。ここでは,先ほど挙げた(1)と(2)のケースの代表例をそれぞれ紹介する。

 (1)のケースに当てはまるのは,フォーティネットの「FortiGate」シリーズやジュニパーネットワークスの「SSG」シリーズなどだ。ファイアウォールとVPNは本体価格に含まれており,IPSやウイルス対策などの各種セキュリティ機能については年間契約のオプション料金が必要になる。だが,セキュリティ機能のユーザー数については制限がない。

 このような価格体系は,特にユーザー数が多い企業に向いているだろう。ソフトウエアの形で提供されるセキュリティ製品では,ユーザー数に応じてライセンス料金が必要となることがほとんど。それらと比較すると,ユーザー数が無制限のUTMの方がコスト・メリットを得られる場合がある。ただし機種ごとにスペックに応じた想定ユーザー数がだいたい決まってくる。ユーザー数が多い企業向けの製品は高スペックになるので,本体価格も高くなる。

ニーズに応じたきめ細かい価格設定

 一方で,(2)のようなユーザー数に応じて価格が決まるケースは,ユーザー数は少ないがトラフィックは多いといった組織にとってコスト・メリットがあるだろう。(2)の価格体系を取り入れているのは,チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズの「VPN-1 UTM」やソニックウォールの「SonicWALL」シリーズ,セキュア コンピューティングの「Sidewinder G2」などだ。

 VPN-1 UTMはソフトウエアで提供されている製品なので,機能ごとではなくUTM自体がユーザー数に応じての価格設定となっている。SonicWALLやSidewinder G2は一部のセキュリティ機能がユーザー数に応じた価格設定となっている。

 このほか,これらとは少し異なる価格体系を設定しているのが米インターネット セキュリティシステムズの「Proventia Network MFS」シリーズ。Proventia Network MFSシリーズはウイルス対策機能がユーザー数に応じたライセンス料金になっているが,そのほかの機能は本体価格に含まれている。ただしシグネチャの更新などは,別途契約が必要な保守契約(本体価格の30%)の中に含まれる。

 (2)の価格体系を採る製品の傾向を見ると,他社のウイルス対策用ソフトウエアやシグネチャを利用する機能は,基本的にクライアント数に応じた価格体系になっている。UTM導入時にはこれらの違いを押さえる必要があるだろう。