GPSは誰のもの?利用料はいくらなの?

(イラスト・アニメーション:岸本ムサシ)

  今回の回答者:
原 圭
クアルコム シーディーエムエー テクノロジーズ
ソフトウェア担当部長

 GPSはglobal positioning systemの略で,人工衛星を利用して自分の位置を特定するためのシステムのことです。カー・ナビゲーション・システム(カーナビ)や携帯電話に搭載されて,すっかり一般的になりました。

 このGPSは誰のものかという質問ですが,答えは米国防総省です。1978年に軍事利用を目的に作られました。

 現在,地球の周りにはGPS用の衛星が24個飛んでいます。受信用の端末はこのうち4個以上の衛星から信号を受信して,周波数や波形,信号を受信するまでにかかった時間などを計測します。それらを基に各衛星からの距離を計算し,自分のいる場所の緯度と経度,高さを特定するのです。

 軍事利用を目的に開発されたGPSですが,その後,民間に利用が開放されました。民間向けのGPSは使う信号の種類が軍事用と違うので精度は劣りますが,それでもカーナビや携帯電話で使うには十分です。

 ユーザーの中には,「米国防総省のシステムを民間が使うのに利用料はいらないのか」と疑問に思う人がいるかもしれません。「端末の価格やサービス料に利用料が含まれているのでは」と思う人もいるでしょう。しかし,そんなことはありません。GPSの利用には一切料金がかからないのです。

 ただ,これからもずっと無料かというと,そうとは限りません。GPSの維持費は年間4億ドル。日本円で480億円と巨額です。しかも,GPSを打ち上げた当初よりもはるかに民間利用が増えていますから,米国防総省が民間から利用料を取って維持費の足しにしようと考えても不思議はないでしょう。

 また,欧州連合(EU)は2010年に「Galileo」というGPSと同等のシステムを構築する計画です。こちらは最初から民間の利用を想定しているので,利用料を取ることも十分考えられます。