フリー・エンジニア
高橋隆雄 フリー・エンジニア
高橋隆雄

 いまや携帯電話は業務に不可欠なコミュニケーション・ツールとなっている。そんなツールをAsteriskで活用するための方法を今回は紹介する。無線LAN対応の携帯電話を活用することで,社内や社外に関係なく会社への着信を取ることが可能になる。

 まずはIPコミュニケーション&モバイル2007にご来場いただいた皆さんに感謝。筆者のセミナーは盛況で,当日はほぼ満席の状態であった。これもひとえにAsteriskに注目が集まっていることの表れではないだろうか。

 さて,セミナー等のイベントでよく聞かれるのが携帯電話とAsteriskの連動。本連載でも既に解説しているが(第18回 携帯電話とAsteriskをつなげる),いまだによく聞かれる点の一つなので再度解説したいと思う。

そもそもSIMロックフリーとは?

 最初に理解しておいてほしいのが「SIMロックフリー」端末の存在。現在,日本国内の正規ルートで入手可能でかつAsteriskと連動できるものはノキアの「E61」のみである。ノキアのE61と同型の端末が,キャリア(携帯電話事業者)からも販売されているが,それはSIMロックフリー端末ではない。E61でSIMロックフリーの端末はノキアが販売するE61だけである。

 そもそもSIMロックフリー,あるいはSIMロックフリー端末とは何だろうか?これは簡単に言うと電話機自体は携帯電話事業者に依存しない電話機のことである。SIMとは「Subscriber Identification Module」の略で,端末に挿す小さなカードのことである。SIMロックフリーの端末は,このカードを挿せば使えるようになる。その際,方式などさえ適合すればどの事業者のカードを使ってもよい。とはいえ日本では,端末とSIMが1対1で特定事業者と結びついている「SIMロック」が一般的。複数事業者のSIMを使えるの「SIMロックフリー」の端末は,前述のノキアなどが一部販売しているだけである。

写真1●SIMカードの例
写真1●SIMカードの例
上がソフトバンクモバイル,下がNTTドコモの第3世代携帯電話で使われるUSIMカード

 現在,日本で使われているNTTドコモやソフトバンクモバイルの第3世代携帯電話はUSIM(User Subscriber Identity Module)と呼ぶカードを使っており,これらを一般にSIMと総称している(写真1)。NTTドコモではこのカードのことをFOMAカードと呼ぶ。電話番号やユーザーを識別するための情報はこのUSIMに収められており,電話機そのものは番号などを「知って」いるわけではない。そのため,このカードを入れ換えることで機種変更ができることになる。

 ただし,前述したように日本の携帯電話事業者の端末は「SIMロック」がかかっているのが一般的であるため,カードを入れ替えて事業者をまたぐような使い方はできない。早い話がソフトバンクの新機種に欲しいものがあるからといって,それを買ってきてFOMAカードを挿しても動作しない。逆もまた同じである。

 これに対してSIMロックフリー端末というのは,FOMAカードであろうとソフトバンクのUSIMであろうと動作する。つまり通信事業者ブランドの端末ではない。この代表例が日本ではノキアが携帯電話事業者を通さずに販売している端末である。 FOMAカードまたはソフトバンク3GのUSIMカードはカード“のみ”の契約が可能である。筆者の経験から,一部のショップではこのことを知らなかったこともあった。そんなときはソフトバンクモバイルの場合は同社の直営ショップが渋谷や六本木にあるので,そこで契約すればよいだろう。ただし,ネットワーク・サービスやメールを使う際などに制約があるので事前に確認しておきたい。なおKDDIはNTTドコモやソフトバンクモバイルとは方式が違うため,たとえノキアのE61にauのカードを挿しても使えない。

携帯+WiFiがAsterisk活用の条件

 ではノキアのE61の何が優れているのかというと,これはもうWiFi(無線LAN)搭載ということに集約される。E61はノキアのEシリーズと呼ぶ製品群の一機種で,おもにビジネス用途を狙った携帯電話機である。Eシリーズはそのほとんどに無線LAN機能が搭載されている。これは単にインターネット・アクセスに無線LANが使えるというだけではない。VoIP(voice over IP)機能を搭載しており音声通話にも使えるのが特徴である。

 筆者は事あるごとに「ノキア自体がAsteriskで動作すると公言した」と触れているのはこのVoIPの部分である。ノキアのE61は無線LAN経由でAsteriskに登録し,AsteriskのSIP(session initiation protocol)端末として動作する。簡単にいうとAsteriskの内線端末として使えるのだ。このため,社内では内線電話機,外に出れば携帯電話として使うことができる。さらに無線LANが使える環境であれば,地理的な場所に関係なく内線として使うことが可能になる。