◆今回の注目NEWS◆

◎引っ越し時などの行政手続き、ネット窓口一本化へ(NIKKEI NET、2007年11月17日)
http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=AS3S1000B+17112007

【ニュースの概要】日本経済新聞(NIKKEI NET)は11月17日、「内閣官房に官民合同のプロジェクトチームを新設」「引っ越しや結婚・出産、入社・退職といったライフイベントごとに必要となる行政手続きのインターネット上の窓口を一本化」と報じた。


◆このNEWSのツボ◆

 日本経済新聞によると、利用低迷が続く電子政府の利用向上のため、政府はライフイベント別にネット上の窓口一本化を図るためのプロジェクトチームを発足させたそうである(記事では明記していないが内閣官房が設置した「次世代電子行政サービス基盤等検討プロジェクトチーム」を指してのことと思われる)。

 それにしても、こうした話が、今頃になってようやく出てくる…というのも、正直に言えば「いかがなものか?」という感じである。もともと、政府は2003年に公表された「e-Japan戦略II」で「インフラ整備に進捗が見られたので、今後は利活用に重点を移す」と謳ったのではなかったのか?

 ところが結局、各種の手続きが「縦割り」のままで電子化され、手続きもバラバラ、認証方式もバラバラと、利用者の存在を忘れたかのような「手続き電子化」が進められてきた。

 考えてみれば、引っ越し一つ取っても、私達がしなくてはいけない手続きは結構な数である。

  • 住民票、印鑑登録など、行政機関向けの登録変更
  • 電力、ガス、電話、上下水道などの、いわゆる「公共料金」に関する住所変更 (最近では、インターネットなどデジタル通信関係の手続きも入ってくる)
  • 「銀行」「保険」「クレジットカード」などの金融関係情報

 もともと、インターネットを通じてこうした手続きができれば、甚だ便利である。現に、今や、金融関係その他多くの民間手続きは、ライフイベントの際の登録変更などは、インターネット経由で受け付けられている。しかし、あまりにたくさん登録したため、パスワードを忘れてしまったり、入力間違いをして、困った経験をお持ちの方も少なくないのではないだろうか?

 こうした時に、公共部門が統一的な認証手続きなどを備えた「手続きポータル」を用意してくれるだけでも、随分といろいろ便利になるように思われる。

 もちろん、こうした「簡便な方式」に不安を覚える人もいるだろうから、手続きの方法を選ぶ選択肢は残されていることが望ましいが、いずれにせよ、こうした利便性を実現していくことが、本来の「電子政府」の目指すべき方向であろう。

 「遅きに失した」感もないわけではないが、それでも、これで画期的に使いやすく、かつ、安全なワンストップ電子窓口ができれば、電子政府の利用も大きく向上することも考えられる。ぜひ、網羅的で、かつ、使い手の立場に立った"本来の「電子政府」の目指すべき"サービスが開始されることを期待したい。

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。