英BTグループは,「21世紀ネットワーク」(21CN)と呼ぶNGNサービスを,世界に先駆けて2006年12月に開始した。電話網のIP化と並行して,16種類あるIP系ネットワークを21CNに統合。既存のIP網で利用できるものを含めて,あらゆるサービスを21CN上で提供する計画だ(図1)。
図1●英BTグループのNGN「21世紀ネットワーク」(21CN)の計画 |
21CNのアクセス回線はメタルで,ADSLによってブロードバンド・サービスを提供する。NTTグループが光ファイバをベースにしているのと違いがあるものの,フルIPのネットワークに移行するうえで,BTの取り組みは参考になる。
BTグループ テクノロジー&イノベーション日本・韓国担当のヨン・キム副社長(写真1)に,21CN構築の現状などを聞いた。
写真1●英BTグループテクノロジー&イノベーション日本・韓国担当のヨン・キム副社長 |
NGN構築の進捗状況は。
電話網のIP化は順調に進んでおり,既に35万のユーザーが21CNでサービスを利用している。現在は,21CNのプロジェクトにかかわった企業と,問題点や改善点を検証しているところだ。
英国には全部で3000万の加入電話回線があるが,これを5年でNGNに移行する。2011年には英国全土でNGNを利用できるようにする。
NGNに移行した35万のユーザーは,どんなサービスを利用しているのか。
NGN上で提供しているIP電話サービスでは,従来から使用している電話機を使っても,広帯域でより自然な音声で通話できる。実際に使ってみると,高い品質の音声であることがよく分かるだろう。
IP電話以外にもIPTVサービスの「BT Vision」やFMCサービスの「BT Fusion」,さらにデジタル・ストレージなどのブロードバンド・サービスを提供している。
BTのNGNでは,IP電話の料金を従来の電話網に比べて高く設定しているのか。
料金は従来の電話網と変わらない。ユーザーはNGNであってもなくても,同じ金額の料金を支払えばよい。NGNは今後コアのネットワークとなるが,高価なネットワークになるわけではない。
NGN上のサービスは,BT自らが開発して提供していくのか。
BTだけでなく,他の企業にも21CNで利用できるサービスをどんどん開発してほしいと考えている。そのためにBTは21CNのインタフェースを広く公開している。我々と競合する通信事業者でさえも,新しいサービスを提供できる。
その一環で,我々はAPI(application programming interface)を提供するためのWebサイト「Web21C」を開設した。Web21Cでは,APIだけでなくソフト開発をするためのSDK(ソフトウエア開発環境)をダウンロードできる。サービスを開発したい企業は,APIを使う際にBTの許可を求める必要はない。BTと取り引きのない企業でもAPIを自由に使える。
多くの企業が,APIを使ってサービスを開発するチャンスを得られるようになる。こうすることで将来,これまで誰も想像しなかった新サービスが登場することを期待している。
BTはもはや単なる通信事業者ではない。ネットワーク上でさまざまなITサービスを提供するサービス・プロバイダになろうとしている。