メンバーの「モチベーション」という目に見えない問題に対して、PMOならではの役割がある。「現場の悩みを引き出しやすい面談の場作り」をプロジェクトマネジャやチームリーダーに助言したり、マネジメント層とメンバーとの“橋渡し役”として、現場の悩みやモチベーションの状態を見える化したりすることに注力できる。

今井 昌史
マネジメントソリューションズ


 進捗会議の一コマ。いつものように2人のチームリーダーがプロジェクトマネジャに進捗を報告し始めました。しかし、Bチームリーダーの報告は、かなりあいまいな内容でした。

プロジェクトマネジャ:「Aチーム、Bチームの進捗状況を報告してください。では、まずはAチームからお願いします」

Aチームリーダー:「はい。現在顧客抽出条件に関する質問の回答待ちで基本設計が2日ほど遅れていますが、先行して詳細設計のうち抽出条件に直接関係のない部分を実施していますので、今週末までに抽出条件の回答がもらえればスケジュールは挽回できます」

プロジェクトマネジャ:「なるほど。ではBチームはどうですか?」

Bチームリーダー:「えーっと、少し遅れている作業はありますが、まぁ、大きな問題はありません。来週にはリカバリできると思います」

 Bチームリーダーは覇気なく、こう答えました。さて、このような報告を聞いたときに、プロジェクトをマネジメントする立場として、どんなことを意識すべきでしょうか。

 Aチームリーダーの報告は非常に具体的で、課題や進捗状況が明確に報告されています。一方、Bチームリーダーの報告はあいまいで、課題や進捗状況が具体化できていません。その点で、Bチームリーダーの報告の仕方はいただけません。しかし、問題はそれだけでしょうか。

年に数回の面談ではメンタル問題の発見が遅れることも

 実は、BチームおよびBチームリーダーはそれ以上の問題を抱えていました。その影響で仕事に対するモチベーションも相当低くなっており、報告の仕方に表れていたようです。PMOとして報告の仕方を注意することも必要ではありますが、このケースでは、裏に見え隠れする問題やモチベーションの低下に気付くことのほうがより重要です。

 進捗の遅れなどは定量的に測れますが、メンバーのモチベーションを定量的に測定するのは非常に困難です。そのため一般には、人事評価の面談などを通じてチームリーダーやプロジェクトマネジャがメンバーのモチベーションを把握し、ケアをしていることが多いと思います。

 ただし、年に数回の面談だけでは、モチベーションの低下を把握する機会が十分とは言えません。面談してみたときには、すでにモチベーションの低下どころか、精神的に相当参っていた、という状況も考えられます。それだけに、できることなら普段からメンバーのモチベーションをケアしておきたいところです。

 こういった、非定量的で管理のしにくい問題に対して、PMOは何ができるのでしょうか?

まずは面談の内容を改善しよう

 面談の中で、メンバーが抱えている問題をチームリーダーやプロジェクトマネジャが聞きだしたいと思っていても、実際にはうまく聞き出せないことがあります。リーダーやプロジェクトマネジャには「人事評価者」としての顔がありますし、少しでも説教じみた態度が出てしまうと、メンバーが相談しにくくなってしまうことがよく起こります。メンバー自身が相談したいと思っていても、いつの間にか気持が萎えてしまうこともあるのです。

 これでは、年に数度の機会を十分に生かせず、危険信号を見逃してしまいます。PMOとしては、後からリーダーやプロジェクトマネジャにヒアリングするなどして、「メンバーが相談しやすい雰囲気の面談だったかどうか」をチェックするとよいでしょう。また、PMOがメンバー役となってリーダー、プロジェクトマネジャと模擬面談を実施し、面談での態度や面談内容を直接チェックする手もあります。

 もし、面談内容に問題があった場合、PMOはリーダーやプロジェクトマネジャに問題点をフィードバックし、面談の内容、進め方、態度などを改善していくように助言します。こうした場作りを支援していくことで、メンタル面の問題を見える化しやすくなります。