ベンダー系資格の一時金平均支給額のランキングでは、シスコのCCIEが長らくトップの座を占めてきた。しかし今回は、ORACLE MASTER Platinum(データベース)がその座を奪取した。ORACLE MASTER Platinum(データベース)の一時金平均支給額は、前回の調査で9万円台。今回は18.1%増えて一気に11万円の大台に乗せた(表1)。

表1●資格取得時に支給する一時金の平均額(ベンダー系)
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資格取得時に支給する一時金の平均額(ベンダー系)

 日本オラクルのデータベース製品向け資格では、上位の資格が軒並み一時金を押し上げた。例えば「ORACLE MASTER Gold(データベース)」は前年比20%を超えた。下位の「ORACLE MASTER Bronze(データベース)」だけは、前年比1.9%減とわずかに減少した。案件が増えている中、日本オラクルのデータベース製品向け資格では、即戦力のニーズの方が高まっているからと思われる。

 一方、首位を奪われたシスコのCCIEは、前年比11.3%と大幅に減少し、12万円台から11万円台に落ち込んだ。営業効果がトップ3の資格について3年間の推移を見ると、シスコのCCIEは営業効果こそ右肩上がりだが、一時金平均支給額は前回調査がピークとなっており、頭打ちの感がある。日本オラクルのデータベース製品向け資格とは対照的だ(図1)。

営業効果でトップ3の資格の一時金平均支給額と営業効果の推移
図1●営業効果でトップ3の資格の一時金平均支給額と営業効果の推移

 営業効果が上昇していることを考えると、シスコのCCIEの価値が下がったとは考えにくい。むしろ、ネットワーク構築を主力とするソリューションプロバイダの経営環境が原因である可能性が高い。  それを象徴する出来事が、2006年末から2007年初頭に相次いだ。旧三井情報開発による旧ネクストコム、日本ユニシスによるネットマークスの“救済合併”が、それだ。一時金の平均支給額が下がったのも、人材育成に多額の投資をかけている余裕がないからだろう。当面、シスコのCCIEの一時金平均支給額は、下げ基調となる可能性が高い。

一時金の支給状況は両極化

 一時金については、支給制度を廃止する動きがある。2007年4月に旧三井情報開発と旧ネクストコムが合併して誕生した三井情報は、合併をきっかけに資格制度を旧三井情報開発に統合。2008年4月をめどに一時金をやめ、受験料などの実費を支給する方針に改める予定。同社の片谷緑人事部人事開発室室長は、「業務とかかわりが強い資格の取得を促すことで、資格の取得が会社にとって利益になるようにするため」と理由を説明する。

 NECシステムテクノロジーは2006年4月、一時金を支給する制度から、実費を負担する制度に変えた。他の公的/非ベンダー系資格の中でも受験料の安い情報処理技術者試験については、実費も負担しない。同社は、昇格時に一定の資格取得を前提条件としている。昇格すれば給与も上がるため、一時金を支給しなくても毎月の給与と賞与で補完できると考えた。

 一方、情報技術開発のように、情報処理技術者試験プロジェクトマネージャを取得した時の一時金として、「100万円」を支給するソリューションプロバイダもある。高額な一時金を設定するのは、優秀な人材確保と社内の技術者のレベルアップにつながるとの考えからだ。

 一時金が高額なことに加えて、情報技術開発では資格取得が人事制度とも対応付いており、昇格に必要なポイントとして換算することもできる。社員のメリットが大きいためか、1年間で社員数の1割に当たる130~150人が資格を取得している。今年は、上半期だけで70人が資格を取得。一時金の総額は1300万円にも上った。

 このように資格取得にかかわる一時金については、社内の人事制度ともからむだけに、ソリューションプロバイダ各社で対応が分かれているのが現状だ。