マイクロソフト以外の選択肢として姿を現したLinuxのデビューから16年。OSの核となるメモリー管理やハードウエア制御,マルチCPU対応といったシステム・サービスのレベルでサーバーOSとしての優劣を語れなくなってきた。ひと頃騒がれたセキュリティ面のぜい弱性においても,OSではなくアプリケーションのバグが目下の課題となっているのが現状だ。
こうした中で見るべき選択ポイントは大きく四つ。(1)ライセンス体系,(2)アプリケーション実行環境,(3)提供形態,(4)ユーザー・インタフェースである(図1)。それぞれの指標で何を重視するかで,最適な選択肢は変わってくる。とにかく導入コストを抑えたいのであれば,Linuxが有利。マイクロソフトのサーバー・アプリケーションを使うなら,Windows以外はあり得ない,といった具合である。
以下では導入/運用時に出てくる差を,社内サーバーでの利用を想定して見ていこう。
図1●LinuxとWindowsの性格の違い OSの違いがセキュリティや信頼性を左右する時代は終わった。 [画像のクリックで拡大表示] |
他に代え難い「完全無償」
LinuxとWindowsを比較する際,まったく思想が異なり,今後も変わりそうがないのがライセンス体系である。Linuxが無償版もあり導入費用はゼロから,Windowsは有償のみという構図が崩れる可能性はゼロに近い。
まずOSにLinuxを使い,Sambaでファイル共有,ユーザー管理を無償のディレクトリ・サービスであるOpenLDAPで集中管理する場合を見てみよう(図2)。この顔ぶれは,コストを最小限に抑える際の定石と言える組み合わせ。サーバーとクライアントに導入するOSの費用だけで済む。
図2●OSと動作モードによる管理性とクライアント・アクセス・ライセンスの違い [画像のクリックで拡大表示] |
一方Windowsのライセンスは,クライアントOSでは接続数の上限を定め,サーバーOSでは利用するクライアントに課金する体系を採る。
クライアントOSであるWindows XPやVistaをサーバーとして使う場合,そのサーバーから見て内向きのTCP/IPセッション数が下位版のHome Editionでは5,それ以上のエディションでは10を超えると,新たなTCP/IPセッションが確立できなくなる。家庭やワークグループで運用するには十分だが,部門レベルの規模で利用するには心許ない。
サーバー向けOSのWindows Serverでは,接続制限の代わりにクライアント・アクセス・ライセンス(CAL)が存在する。CALとは,サーバーの機能を利用するためのライセンスのこと。OS本体の価格に加えて,サーバーの利用権としてCALを購入する必要がある。
Windows ServerのCALの場合は,ユーザーまたはデバイスに利用権を付与するタイプ(ユーザーCAL,デバイスCAL)か,サーバーに同時接続数できるユーザーおよびデバイスを決めるタイプのいずれかを選ぶ。前者はサーバー数が多くユーザー/デバイスの数が少ない場合,後者はサーバーが少なくクライアントが多い場合にコストを抑えられる。CALのタイプを途中で切り替えることはできないため,急にサーバーだけ,あるいはクライアントだけが増えるといった状況では割高感を感じるかもしれない。