第1回で見たNASの特徴をふまえたうえで汎用サーバーを見ると,メリットは構成の自由度と拡張性にあることが浮かび上がってくる(図2)。

図2●NASと汎用サーバーの導入手順
図2●NASと汎用サーバーの導入手順
NASは手軽に導入できるぶん機能追加はできない。汎用サーバーは導入の手間がかかるが,任意の機能を追加できる。

標準機能だけのNAS,拡張性の汎用サーバー

 NASはアプライアンスであるがゆえに拡張性は皆無に近い。追加できたとしても,バックアップ・ソフトやウイルス対策ソフトといった限定的なアプリケーションに留まる。

 一部のNASは,Webサーバーの「Apache」,データベースの「MySQL」,スクリプト実行環境の「PHP」や「Perl」といったいわゆるLAMP環境を備えている。簡単なWebサイトなら構築可能で,スキルが許す範囲で拡張する余地がある。ただそれらモジュールのアップデートはベンダーが提供するファームウエア(実体はOSそのもの)に依拠するため,提供頻度によってはセキュリティ・ホールがある旧版を使い続けることにもなる。

 一方汎用サーバーによるファイル・サーバーは,見込まれる負荷に応じたハードウエアを選定し,目的に応じたサーバーOSを選択,必要に応じて使う機能を増やしたり,サーバー・アプリケーションをインストールできる。

監視の一覧性ならNASに軍配

 導入後の利用シーンを見据えて押さえておきたいポイントは,管理画面とアクセス権設定の手順の差である。

 まずNASの管理画面はWebブラウザ・べースが基本。NASの管理上必要な項目だけにメニューを絞っており,一覧性に優れる管理画面となっている(画面1)。

画面1●ファイル共有の管理画面
画面1●ファイル共有の管理画面
NASの管理画面はファイル共有に特化しているぶん,空き容量やIPアドレスがすぐに分かるなど一覧性に優れる。汎用OSであるWindows Server 2003は,個々の管理ツールをポータル画面で集約している。
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 かたやサーバーOSの管理画面は,あらゆる用途を想定したものである。このためファイル・サーバーとしての管理作業に見合う管理ツールを見つける手間がかかる。Windows Server 2003から「サーバーの役割管理」というメニューが追加されたものの,スタート・メニューやコントロール・パネルの出番はまだ多い。

 Sambaは,Samba専用のWebベースの管理ツール「SWAT」がある。NASに比べるとは煩雑だが,Windowsよりは見通しが良い。

アクセス権設定の作業が管理者に集中

 最後のポイントであるアクセス制御は,汎用サーバーの方がむしろ負担が少ない。自由度というよりも,エンドユーザーを含めた利用シーンにそぐわない仕様があるからだ。

 Windowsのセキュリティ機構を使わないNASのファイルをクライアントから見た場合,フォルダやファイルのプロパティに,アクセス権を設定するタブがない(ドメイン連携機能を持つ製品を除く)。

画面2●共有フォルダのアクセス制御設定画面
画面2●共有フォルダのアクセス制御設定画面
WindowsやSambaとのドメイン連携ができないNASでは,アクセス権の変更作業が管理者に集中する。
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 汎用サーバーによるファイル共有であれば,権限のあるユーザーが自由にフォルダを作成し,そのフォルダにアクセス権を設定できる。Windowsのファイル・サーバーとしては当たり前の機能なだけに,使えなくなったユーザーの戸惑いは大きいだろう。管理作業が委譲できない場合は,ユーザー登録やアクセス権の設定に忙殺されかねない。少なくともCSVでユーザーやアクセス権を一括登録できるNASを選ぶのが得策だ。

 次回は,汎用サーバーを選択した場合に直面する分かれ目となる「Windows」と「Linux」の選択のポイントを解説する。