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SaaSの売上はどこで計上される?

2007/11/20
神近 博三=ITpro

 先日,新製品のリリースをチェックしていたとき,あるSaaS(Software as a Service)のサービスに目が留まった。価格の記載はあるが,消費税込みなのか税別なのかが分からない。そこで問い合わせてみると「このサービスは米国企業が提供しますから,日本の消費税は発生しません」とのこと。この米国企業は日本に営業所を設置しており,そこに所属する営業マンが「顧客とサービスとのマッチング」を行い,売上は米国で計上する。従って,日本の消費税を支払う必要はないというのだ。ちなみにこの米国企業は,ある日本企業の子会社であり,リリースに記載された「報道関係のお問い合わせ先」は,親会社である某日本企業の広報・経営企画室である。

 この返答を聞いたとき,すぐに「これ大丈夫なの?」という疑問を持った。これがOKなら,消費税や法人税の安い国に会社を設立して,そこからSaaSの各種サービスを提供すれば,競合他社に対してコスト的に優位に立てる。ハードウエアやパッケージ化されたソフトウエアであれば,国をまたがった“モノの移動”には関税が発生するので,話はそれほど簡単ではない。しかし,SaaSはネットワークさえ通じていれば,サービスをどこから提供しようが関係ない。ひょっとしたら,将来はドミニカあたりのタックスヘイブンに巨大なデータセンターが建設されて,そこから全世界にSaaSを提供するベンダーが登場するのではないだろうか。

 この件が気になって,他のSaaSベンダーの記者会見でも,関係者に「(某企業の名前を伏せて)こうしたやり方はOKなんですか」と質問をぶつけたことがあった。しかし答えは「実態によりますから,簡単にはお答えできません」。どうもよく分からない。

移転価格税制が阻む海外子会社への所得移転

 その後,いろいろ調べてみると,少なくとも税金逃れを目的に海外子会社を設立してSaaSを提供することは,“移転価格税制”にひっかかるのでアウトらしい,ということが分かってきた。移転価格税制とは,親会社と海外子会社間の取引価格が適正でない場合に,適正な価格で取引した場合の所得を計算し,それに対して課税する制度である。この移転価格税制の適用事例の中に,「海外の子会社が稼いだ利益が日本国内の親会社のノウハウで生み出されたものである場合,海外子会社が稼いだ利益であっても,日本国の課税対象になる」というものがある。

 日本企業が安い消費税や法人税を目的に海外子会社を設立し,その子会社がSaaSを提供して売上を計上したとする。この場合,技術的なノウハウが親会社である日本企業のものであれば,子会社の利益は親会社が本来得たものとして,日本国の課税対象になる。結果として,子会社の所得は外国政府と日本政府から一時的にせよ「二重課税」される可能性が高くなる。

注)移転価格税制の話は,「ITを経営に役立てるコスト管理入門」の執筆をお願いしている高田直芳さんの著作「戦略会計入門」を参考にした

 主要各国は税の海外流出をどこも警戒しており,米国やドイツにも移転価格税制がある。従って,税金逃れを目的に「船はパナマ,SaaSはドミニカ」となる心配は,いまのところはなさそうだ。

 ちなみに冒頭で紹介した某日本企業の米国子会社は,税金逃れの意図はまったくないようで,「シリコンバレーの最新IT技術をいち早く取り入れる」ことを目的に設立されたという。仮に親会社の技術ノウハウをSaaSに流用していたとしても,適正な対価を親会社へ支払ってさえいれば,移転価格税制にひっかかるおそれはないのだろう。

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