写真10-1 ストックヤードと工程間でかんばん方式を導入
写真10-1 ストックヤードと工程間でかんばん方式を導入
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写真10-2 旧正月の飾り付け
写真10-2 旧正月の飾り付け
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 車載通信機器などを製造・販売するヨコオが、日本での成功体験をもとに中国でトヨタ流改善を始めたのは2006年。その中心人物である多胡 一男氏に、取り組みの詳細をほぼリアルタイムでメルマガに寄稿してもらった。1年前の話ではあるが、現地に改善活動を根づかせるためには何が課題となるのかなど、中国で改善に取り組もうとする企業にとっては大いに参考になるだろう(日経情報ストラテジー編集部)。

多胡 一男
東莞友華汽車配件有限公司(ヨコオの中国法人) OJT-Sプロジェクト 経理担当


 皆さん、こんにちは。中国からの第10回となります。
(原文は2007年2月21日付け日経情報ストラテジー・メール)

 今回も、前回に引き続き第2期OJT-S(トヨタ生産方式に基づく職場改善・人材育成)活動の目玉である倉庫カイゼンチームの「かんばん」導入を中心にお話しします。

■カイゼン活動

【1】倉庫カイゼンチーム

 このチームはマイクロアンテナの部品倉庫のカイゼンに取り組んでいますが、目的は在庫の見える化(最終は適正在庫数量の設定、管理工数削減)で、その活動の一貫として「かんばん」による部品供給方法カイゼンに着手しています。1月は「かんばん」を進化させるべく、日本で「かんばん」導入をメインで推進しているメンバーを招き、「かんばん」の持つ本来の意味や役割について指導をして頂きました。

 初めに、友華汽車に導入を進めている「かんばん」の種類について紹介します。最初に導入を開始したのが「部品引き取りかんばん」です。

 内容は組み立て工程と部品倉庫間での部品供給指示を「かんばん」を用いて行うものです。まず、工程の近くに部品棚(以下ストアー)を設けて、適正量の「かんばん」を付けた部品を置きます。組み立て工程は必要な部品をストアーから取り出し、部品に付いている「かんばん」を外します。外された「かんばん」は倉庫へ戻り、その後「かんばん」で指示された分のみの部品がストアーへ補充されます。「部品引き取りかんばん」は「かんばん」の仕組みを理解してもらう手始めとしてちょうど良いと思います。

 この後に導入を予定している「内作部品引き取りかんばん」「内作指示かんばん」は、部品倉庫と汽車内の他部門(例えば成形部門)間での部品供給と生産指示用のためのものです。

 「かんばん」は生産をする情報伝達の手段として有効であり、また、これによって部品発注のタイミングや在庫数など「ものづくり」をするうえで欠かせない部材管理に関する問題点も見えてきます。

 いずれにしても、友華汽車内では1つの製品グループで毎日数百点の部品が倉庫や他部門から供給されています。そういった「物と情報の流れ」を見える化し、カイゼンしていくことが友華汽車にとって有効であることに違いはありません。

【2】ほかのカイゼングループ

マイクロアンテナ
 1期から引き続き活動中ですが、カイゼン未着手だった工程の標準化が進み、職場全体の管理レベルがそろい始めています。そんななかでもムダが無いわけではなく、メンバーは日々カイゼンのネタ探しと定着への指導に奔走しています。 前回触れた部材供給・離席対応専任者については、改めて作業分析を行い業務内容の統一を図りながら、専任者のバラツキを無くす方向で進めています。

GPSアンテナ
 前回の報告のなかで標準作業と現実の差についてお話ししましたが、人に起因する問題のほかに設備的な課題が明らかになりました。ただ、設備は現場では手が出しづらいので、まず人的要因のカイゼンに取り組んでいます。

中継コード
 年末年始の休暇を利用し、職場の約3割を占めるケーブル切断と端末加工工程を供給先別(自部門、他部門向)にグループ化したレイアウトに変更し、物の流れの簡素化を進めています。

 また、ケーブル組み立て工程も出荷まで複数の工程が必要となり、その度に箱への詰め替えが発生するため、モデルラインを設置し詰め替え「ゼロ化」に向けて試行中です。

成形
 金型置き場の2S(整理・整頓)が進み、使用頻度の高い型を棚に収納し、低頻度の型は別に保管することにしました。当然のことながら、棚番号の表示と収納ルールを決めて「見える化」をしています。モデル成形機では必要以上に広かった作業台や部品置き場についてのカイゼンを進め、作業者の移動距離短縮を図っています。

■赴任生活

 1月中旬に研修参加のため日本に一時帰国しましたが、今の季節は偏西風が追い風となって4時間ほどで成田へ到着します。おかげで早朝に東莞を出発し午後4時過ぎには自宅に到着するので、ゆっくり周辺の散策が出来ました。

 中国では旧正月を前に、街が赤と金色を主体の飾りつけで一段と華やかになってきています。裏通りには、日本でいう門松の代わりなのか、「みかんの鉢植え」の露店が至るところに設営され、正月を迎える準備が進んでいます。ちなみに鉢植えの木は大きいもので2メートルほどあり、なっている実はおいしくないとのことです。

 では、今回はこの辺で。


多胡 一男(たご かずお)
1981年、株式会社ヨコオ(車載通信機器・無線通信機器などの製造・販売)入社。2006年6月より同社中国工場である東莞友華汽車配件有限公司にてOJT-Sプロジェクト 経理担当。ヨコオでは、人事部門にて、人事システム革新テーマ等に取り組む。その後、車載通信機器生産部門責任者に就任。2004年には韓国での合弁会社の製造立ち上げ責任者として駐在。2005年からはOJT-Sプロジェクト(トヨタ生産方式に基づく職場改善・人材育成プロジェクト)に参画し、製造現場のものづくりシステム改善に取り組み、現在同社中国工場への展開で奮闘している。同社のWebサイトはこちら