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Enterprise温故知新

IBM-富士通紛争の当事者が四半世紀ぶりに沈黙を破り、秘密契約締結に至る厳しい交渉経緯を出版

谷島 宣之=日経コンピュータ編集委員 2007/11/14 日経コンピュータ

 コンピュータ産業史上、最大の国際企業間紛争であった「IBM-富士通紛争」の当事者が四半世紀ぶりに沈黙を破り、紛争の内幕を事実上明らかにする。富士通の交渉役であったキーパーソン中のキーパーソンが、IBMと秘密契約を締結するに至る厳しい交渉経緯を小説『雲を掴め 富士通・IBM秘密交渉』(発行・日本経済新聞出版社)として発表するものだ。

 IBM-富士通紛争については1年前、当サイトにおける特別連載「初めて明かす『IBM-富士通紛争』徹底報道の舞台裏」において、日経コンピュータの松崎稔・元編集長が詳しく論じている。ただし、守秘義務という厚い壁に阻まれ、IBM関係者も富士通関係者も、紛争発生後四半世紀を経た今日まで、この歴史的大事件の詳細を自ら語ったことは無かった。

 『雲を掴め』の筆者は「伊集院丈」と名乗る人物である。著者略歴欄においても「作家」とだけ記しているという。だが、伊集院丈はペンネームであり、実際の筆者は、富士通の専務・副会長を歴任した鳴戸道郎氏である。

 鳴戸氏は「作家の小説」という形式に強くこだわり、『雲を掴め』の中で「富士通の鳴戸」であることを自ら明かしていない。それでも同書は当事者によって公にされたIBM-富士通紛争に関する初めての記録と言えるだろう。

当事者のみが知る事実がどれほど明らかにされているのだろうか。今週末(11月16日)に配本される同書を手にとってみないとなんとも言えない。先の特別連載を寄稿した松崎氏が『雲を掴め』に長い解説を書いている。松崎氏に頼み、解説の出だし部分を見せてもらったので、一部を抜粋して掲載する。


 本小説は紛争の発端から秘密契約締結に至る大企業の命運をかけた厳しい交渉過程を、著者自らの経験を踏まえ生き生きとリアルに描いている。小説(フィクション)という形を採ってはいるが、本小説の著者・主人公である伊集院(本名、鳴戸道郎)さんは、この小説の舞台となっている一九八二‐八三年当時、日本のコンピュータメーカー富士通の海外事業部の事業管理部長であった。IBM-富士通ソフトウエア紛争の一方の当事者(富士通)側の交渉役として、本小説にもあるように、IBM互換OS(オペレーティングシステム)開発に関してIBMとの厳しい交渉に当たり、富士通の互換OS開発に関する両社の「和解契約」と「外部仕様情報 (EI)契約」からなる秘密契約の締結にこぎつけた(八三年六月末)。

 しかし両社の紛争はこれで終わらず、IBMからのクレームによって紛争は一九八五年七月、国際商事紛争の仲裁機関である米国仲裁協会 (AAA)に持ち込まれ、両社の激しい意見対立の下、調停・仲裁作業が進められた。本小説「あとがき」にあるように両社間で本紛争の終結合意書が調印されたのは九七年四月末であり、IBM‐富士通ソフトウエア紛争が完全に終結するまで一五年の長きを要した。日本のコンピュータ産業史上最大の紛争であったと同時に、知的財産権のありように大きな影響を与えた事件である。伊集院さんはこの間ずっとこの難しい紛争にかかわり、IBMとの交渉・訴訟に取り組んできた富士通側の中心人物の一人である。

 もちろん「あとがき」にあるように、本小説は四半世紀前に現実に起こったIBM-富士通ソフトウエア紛争の「事実としての全体像」を明らかにしようとしたものではない。秘密契約締結までを題材に、小説(フィクション)という形を採ることで、企業間競争の本質と交渉技術・過程をよりリアルに描こうとしたものである。事実、本小説の登場人物は主人公を含めそのほとんどが仮名であり(ただし初出時に、太字となっている人名は実名)、その言動は創作されたものである。

 しかし一方、登場人物は現に実在した人に基づいており、一部の人を除き、本小説中の記述はあくまでその人の言動・果たした役割をベースに創作している。また弁護士事務所を除く会社名やその他(製品名など)は実名である。当時のコンピュータ業界の状況はもちろん、記述されている個々の出来事やIBM-富士通ソフトウエア紛争の展開も(表現上の創作はあるが)、日時・場所を含めほとんどが事実に沿って描かれている(もちろん著者の体験・見方の範囲内という限定付きではあるが)。難病を患われ、死と直面しながらの執筆となったがゆえに、ここまで赤裸々に書けたのだと思う。

 以上の解説から、鳴戸氏が「作家の小説」にこだわった理由が分かる。鳴戸氏は「企業間競争の本質と交渉技術・過程」を広く一般のビジネスパーソンに伝えたかったのである。「富士通の鳴戸によるノンフィクション」として発表してしまうと、「当事者が明らかにした紛争の事実としての全体像」に関心が集中し、鳴戸氏が訴えたい内容からずれていってしまうし、読者がコンピュータ関係者に限られてしまう恐れがある。本稿を読んで『雲を掴め』を読もうと思われた読者の方々は、ぜひとも鳴戸氏の意を汲んで国際的な「企業間競争の本質と交渉技術・過程」を読みとっていただきたい。

 1年ほど前から、コンピュータ産業を担当する記者の間で、「鳴戸さんがついに本を書き始めた」「体調はかなり悪いらしいが『出版するまでは死なない』と言っている」といった話が取りざたされていた。その本がついに登場する。幸いにも、「何としてもこの本を世に出したい」という鳴戸氏の気迫が病魔を追い払った。鳴戸氏、いや新進気鋭の作家、伊集院氏は現在、『雲を掴め』の続編を準備中という。

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