期末を終えたからといって、クロージング活動が終わるわけではありません。新年度のスタートダッシュのためにも、見込み案件のクロージング活動を推進することが大切です。“常勝のソリューション営業”を実現するには、常にクロージング段階にある案件を保有し、その案件を追い詰めている状態をつくることが大切なのです。

 見込み案件を成約するためのクロージングのポイントについて、これまで4回にわたって解説してきました。今回はその最終回として、クロージングを成功に導くポイントをチェックリストとしてまとめ、見込み案件成約の羅針盤として活用していただきたいと考えます()。

表●案件成約のためのチェックリスト(本文中、段落の頭の数字はチェック項目の番号に対応します)
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表●案件成約のためのチェックリスト(本文中、段落の頭の数字はチェック項目の番号に対応します)

 期末を終えて一息入れている営業パーソンも多いかもしれませんが、「初めが肝心」です。見込み確度の低い案件であってもランクアップ活動を行い、確度を高めていくことが重要です。今回チェックリストとして紹介する内容は、見込み確度を高めるための活動でもあるのです。このチェックリストの内容を、案件ごとに一つひとつ吟味することにより、案件のランクアップとともに成約へと結び付けてください。

 チェックリストの大項目は、顧客の導入意志確認、RFP(提案依頼書)対策、競合対策、キーパーソン対策、提案行動、意思決定プロセスの六つです。それぞれの項目について五つのチェック項目を設定していますので、項目ごとに「できている…3、ほぼできている…2、あまりできていない…1、できていない… 0」の中から回答を選んでください。各項目の点数を合計することにより、見込み案件の状況を点数化することができますので、見込み案件の見える化に役立てることができるでしょう。

 クロージングの本来の目的は見込み案件を成約することにありますから、不足している手立てを項目ごとに検討し、受注対策として行動に結び付けることが重要です。従って、このチェックリストは合計で何点以上なら合格といったものではありません。“満点”を目指し、不足分を補っていってください。それではチェックリストの個々の項目について、確認していきましょう。

チェックポイント1:顧客の導入意志は固まっているか

(1)案件の導入目的・背景が明確になっており、必要性が納得できるレベルにあるでしょうか。担当者の思いつきレベルの見込み案件なのか、それとも必然性のある案件なのかを見極めるのです。なぜ、この案件に取り組む必要があるのか、エンドユーザーの現場ではどのような問題が起こっているのか、この課題解決に取り組まなかった場合、どのくらいのマイナス効果が見込まれるのかを把握することが重要です。

(2)見込み案件は経営課題との関連が明確になっているでしょうか。上位の経営課題の解決策の一つとして位置付けられた案件であれば、導入意志が強いと判断することができます。それとは逆に経営課題との関連性が見当たらないときは、優先順位が低い案件である可能性も想定しておく必要があるでしょう。

(3)顧客が解決しようとしている課題の重要度、緊急度は高いものでしょうか。経営課題以外の視点からも重要性が確認できる点があるかどうか、緊急に対処すべき課題なのかどうかを見極めておくことが大切です。

(4)当該案件について、顧客の経営層の導入意志を確認できているでしょうか。担当者レベルの意志は強くても、経営層の意志が弱ければ案件の実施可能性は確実なものとはいえません。複数の情報源から経営層の意志を確認してください。

(5)導入予算が確保されているのかを確認しているでしょうか。どのくらいの予算を見込んでいるのか、その根拠はどのように試算したものなのかも把握しておきたいものです。もちろん予算化されているとしても、それが確実に執行されるとは限りません。顧客の業績推移や環境変化を見極め、状況を常に把握しておくことも大切です。

チェックポイント2:RFPへの対策は万全か

(1)RFPは顧客から提示されているでしょうか。案件化しているということは、顧客から要望や要件が提示されているはずですが、文書になっていなかったり、顧客の要件が曖昧(あいまい)であったりする場合もあるでしょう。そのようなときには、要件整理の段階から案件化を促進する必要があると判断できます。

(2)自社が提案した内容は、RFPの要件を満たすことができているでしょうか。要件を満たすことは最低条件といえますが、単に要件を満たすのではなく、なぜその要件が必要なのかという背景を十分に理解しておくことが大切です。

(3)顧客に提案した内容は、自社の強みを生かした提案になっているでしょうか。具体的な競合相手と比較して、自社にしかできない提案を盛り込むことができているか、顧客の要望に対して自社の強みを上手に生かす提案になっているかを確認してください。

(4)自社の提案は、競合他社よりも優位性のある提案になっているでしょうか。自社にしかできない提案を盛り込むことができなくても、すべての面において競合他社より優位に立つことができれば、勝利に近付くことができます。プレゼンテーション後の顧客へのアプローチにより、自社の提案がどのレベルにあるのかを把握しましょう。

(5)自社の提案内容は、顧客の要望の優先順位を踏まえた訴求力のあるものになっているでしょうか。競合他社との違いがあまり出せない場合でも、顧客の優先順位の高い要望に対して訴求力を持った提案ができれば、相対的に有利な状況を作り出すことができます。