見込み案件であることは確かだが、顧客が意思決定をしてくれずに結論が延び延びになっているEEE。このような案件の中には、営業パーソンの押しの強さやテストクロージングのひと工夫によって、受注成約を促進できることも少なくありません。あなたのクロージング方法に工夫できる余地はないか、クロージング方法の改善ポイントを解説しましょう。

 クロージングとは、顧客との合意を得るための交渉を行い、契約を締結させることをいいます。つまり、クロージングを成功させるには、営業パーソンが提案した内容を顧客に納得していただき、契約締結の意思決定を促す必要があるのです。そして、契約の意向を顧客に打診することを「テストクロージング」といいますが、この打診の方法をひと工夫することにより、顧客の意思決定を促すことができます。それではテストクロージングをどのように工夫したらよいのか、そのポイントを見てみましょう。

Point1:テストクロージングを多用せよ

 テストクロージング、つまり契約を顧客に打診する行為は、商談で一度だけ行うといったものではありません。機会を見付けて数多く行うことが基本です。自社の提案を気に入ってもらえたかどうか、自社を選定してくれる意向は強いのかどうか、何度も打診して反応を確かめるようにします。

 そのときは正式契約に至らずとも、口頭内示を獲得するためには、テストクロージングは欠かせません。テストクロージングをする機会は商談の至るところにあるのですが、営業パーソンによってはそうした絶好の機会を見落としていることもあるでしょう。そこでテストクロージングをどのタイミングで行えばよいのか、三つの視点から説明します(図1)。

図1●テストクロージングのタイミング
図1●テストクロージングのタイミング

話の流れからタイミングをつかむ

 顧客との会話の中で自社の提案内容を説明したり、顧客からの質問や疑問点に答えたりした後や、強調したいセリングポイントを言い終えた後などは、テストクロージングを行う絶好のタイミングです。例えば次のように打診してみます。

 「手前味噌になりますが、この技術は弊社ならではのものと自負しております。システムの肝になる部分でもありますので、是非私どもにお任せ願えませんか」。「導入後の運営・保守までをトータルでお考えいただくことが最善の選択かと存じます。かゆいところに手が届くのは、私どもを活用いただく最大の利点でもあります。そのことは○○さまもご同意いただけますよね」。このように、自社が強調したポイントが顧客に納得してもらえているかどうかを確認すると同時に、契約締結の意向を打診するのです。

言葉の内容からタイミングをつかむ

 顧客が「当社のことをよく理解してくれていることが分かる提案ですね」というように、自社の提案をほめてくれたときはテストクロージングのチャンスです。「ありがとうございます。私たちが疑問に思ったことについて、お客様が胸襟を開いて教えてくださったからこそできた提案です。私たちにこの案件をお任せ願えれば、必ずやお客様に満足いただけるシステムが構築できると確信しております。ぜひお任せくださるようお願いいたします」。こんなふうに、感謝の言葉を述べつつ、契約締結の意向を打診するのです。

 顧客が導入後のことについて真剣に質問してきた場合も、テストクロージングのチャンス到来といえます。ソリューションプロバイダとして選定した場合を想定しての質問ですから、質問に答えたあとは「ぜひ、私どもにお任せください」と最後の一押しをしてみましょう。また、提案の内容面について何度も同じことを繰り返し質問してきたときは、顧客が自社を選定することを前提に最終確認していることが想定できます。自信を持って明確に回答したあとに、「これで安心して、ご発注いただけますでしょうか」とテストクロージングしてみるのもよいでしょう。

表情や態度からタイミングをつかむ

 和やかな雰囲気で提案内容を説明したあとに、顧客のにこやかな表情がちょっと引き締まったときや、急に黙り込んだり、ため息をついたりするような場面があったとします。顧客は心の中で「提案してくれた内容は気に入ったが、ほかに確認しておかなければならない点はないかな」と最終チェックをしていたり、「他社の提案内容よりも良さそうだが、意思決定して間違いないかな」と多少の迷いが頭をよぎったりしているのでしょう。このようなときにこそ、営業パーソンは意思決定のお手伝いをすべきなのです。

 「あとはお客様の決断一つかと存じます。もし、何か気がかりな点があれば、何なりとお申し付けください」。「現行システムの問題を考えれば、1日も早く新システムに移行することが重要ではないでしょうか。今が決断のときかと存じます」。このように、顧客が意思決定にあたって抱いている不安や迷いについて、その払拭の手助けを申し出たり、決断を促したりするように営業パーソンは働き掛けを行うようにします。

 顧客の視線がとまったり、あごや頭を触り始めたりしたときなども、何か考え事をしているサインです。営業パーソンは顧客のちょっとした表情や態度の変化を見逃さず、そのチャンスを生かしてテストクロージングを心がけましょう。