車載通信機器などを製造・販売するヨコオが、日本での成功体験をもとに中国でトヨタ流改善を始めたのは2006年。その中心人物である多胡 一男氏に、取り組みの詳細をほぼリアルタイムでメルマガに寄稿してもらった。1年前の話ではあるが、現地に改善活動を根づかせるためには何が課題となるのかなど、中国で改善に取り組もうとする企業にとっては大いに参考になるだろう(日経情報ストラテジー編集部)。
多胡 一男
東莞友華汽車配件有限公司(ヨコオの中国法人) OJT-Sプロジェクト 経理担当
皆さん、こんにちは。中国からの第9回となります。
(原文は2007年1月17日付け日経情報ストラテジー・メール)
今回は、第2期の中で特に力を入れている倉庫カイゼンについてと、日本からOJT-S(トヨタ生産方式に基づく職場改善・人材育成)を指導していただいているトレーナーの訪問がありましたので、その時の様子を中心にお話しいたします。
【1】倉庫カイゼンチーム倉庫カイゼンは、この後導入を計画している各種の「かんばん」の基礎となる重要なテーマのため、第2期開始に合わせ日本からスタッフ1人を強化し、カイゼン活動を展開しています。
5S(整理、整頓、清潔、清掃、しつけ)
カイゼンのスタートはまずは「2S(整理・整頓)」からということで、在庫状況や使用頻度などの現状把握を始めました。入荷月ごとの在庫を確認し、12月以前に入荷したもの、現在庫のうち12月に未使用なもの、12月の必要数以上に在庫があるものなどに分類した結果、当面使用しない部品が倉庫内に多数眠っていることが分かりました。これらの部品を一カ所に集めた結果、倉庫スペースの約2割を空けることができました。
かんばん導入
まず、「かんばん」という言葉を理解してもらうため、日本で使っているサンプルと資料を使って関係者に対して説明会を実施し、「かんばん」を身近に感じてもらうこととしました。次に、実際にマイクロアンテナ部品数百点をモデルに「後工程引き取りかんばん」を試行し、「かんばん」に慣れてもらうことにしました。対象部品約300点について、組み立て工程からの「後工程引き取りかんばん」として、2007年3月末を目標に展開中です。
マイクロアンテナ
今回は引き続き活動する製品であるので基礎はできつつありますが、現場主導でのカイゼン定着はまだまだの感があります。例えば、第1期で導入し可動率向上で成果のあった部材供給・離席対応専任者の配置においては、全ラインへの設定が終了し、各ラインで成果が出始めるなか、休暇などで「専任者」が不在でもそのままになっていたりと、継続させるのに目が離せない状況です。
GPSアンテナ
職場全体の5Sを進めながら、工程カイゼンについては製品の種類が多いため、モデルラインを徹底的にカイゼンすべく取り組んでいます。そのなかで分かったのが既存の標準時間の甘さと、それに慣れてしまっている作業者・管理者たちです。4M(人、物、設備、方法)のうち一番やっかいな「人」のカイゼンに推進メンバーは悪戦苦闘しています。
中継コード
ここは友華汽車で人員・スペースとも最大の職場であり、作業内容が3つに大別されることから、各工程間の情報(生産指示)と物(次工程へ渡す加工済み部品など)を整理し、最少ロットでの生産体制を作るべく取り組んでいます。
成形
まず「2S」です。材料と完成品そして金型が多数あり、要・不要の分類と表示による「見える化」としてのルール作成と、現場と協業し整理整頓を行い在庫の「見える化」に取り組んでいます。また、多数ある成形機からモデルを設定し、物と作業の流れに沿った配置へとカイゼンを開始しています。
日本で指導いただいているトレーナーが12月中旬に訪中され、友華汽車でのカイゼン活動を視察していただきました。今回最も良かったことは、工程視察に同行したローカルメンバーがトレーナーと接したことで刺激を受け、その後の動きにスピード感が出てきたことです。
■赴任生活
年末年始の休みを利用し、赴任仲間と北京を旅してきました。故宮をはじめとする世界遺産を見学し、天安門広場で新年を迎えました。万里の長城にも登り中国四千年の歴史の一端にふれ、機械のない時代にすごい建造物を作ったものだと感心するばかりでした。
では、今回はこの辺で。
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