総務省の「有線放送による放送の再送信に関する研究会」(座長:新美育文・明治大学法科大学院教授)の第2回会合が,2007年11月8日に開催された。地上波放送の区域外再送信を巡っては,ケーブルテレビ(CATV)事業者側地上波民放事業者側とで意見がまとまらず, CATV事業者が再送信の大臣裁定を申請するケースが相次いでいる。今回の会合では,日本ケーブルテレビ連盟(CATV連盟)と日本民間放送連盟(民放連)から代表者が出席し,区域外再送信についてのそれぞれの考えをヒアリングした。

 アナログ放送で見られたものはデジタル放送でも見られるようにしたいCATV連盟と,個々のケースで再送信が妥当かを再検討したい民放連の溝は大きく,ヒアリングでは相手側の対応が一方的であることを非難する場面もみられた。ただし早期に問題解決を目指したいという点では意見の一致がみられ,今回のヒアリングをきっかけに両者で話し合いの場が持たれることになった。

 ヒアリングで明らかになった論点は大きく四つある。第1は,放送の地域免許制度への影響についてである。民放連は「行き過ぎた区域外再送信は地域免許制度を形がい化する」と主張,これに対してCATV連盟は地域免許制度の必要性は認めながらも,「あくまで近隣地域への再送信が原則で,例えば関東地域の放送を北海道に再送信するようなことは想定していない」とし,制度への影響は限定的であるとの認識を示した。

 第2は,大臣裁定の是非についてである。「約20年前に作られた大臣裁定の判断基準は同一性の保持だけに着目した偏ったもので,廃止を含めた抜本的な見直しが必要」とする民放連に対して,CATV連盟は「大臣裁定がなくなると,再送信の交渉が決裂した場合に裁判で決着をつけるしかなくなる。現状の内容にこだわらないが,何らかのルールは必要」と,見直しには一定の理解を示したものの,廃止には反対の意見を述べた。

 第3の論点である著作権法上の問題についてCATV連盟は,「放送事業者から対価請求があれば対応する。また原権利者に対しては権利者関連の5団体と年間包括契約して対価を支払っている」とし,問題はないとの認識を示した。しかし民放連は,「対価を支払えば再送信が可能になるというものではなく,放送事業者の持つ権利は許諾権である」と,認識の違いを示した。