今からWindows Serverにするなら2003と2008、どっち?

 「サービスパック1まで待て」。Windowsに関する“通例”である。しかし、ベータ3で検証を進めているベンダーは、バグや不安定な動作は大きく減っていると口をそろえる。「今回のベータ3は、極めて完成度が高い。このまま出荷しても受け入れられるのではないか」(日本HPの飯島氏)。

 では、移行するならいつごろにするべきか。Windows Server 2003のユーザーは急ぐ必要はない(図6)。Win-dows Server 2003のバグ修正は、「メインストリーム・サポート」が続く2010年2月まで、無償で実施されるからだ。それ以降は、2015年2月まではセキュリティに関するバグ修正は無償で行われるが、それ以外のバグを修正するには、年間1000万円程度の「有償サポート契約」のほか、修正パッチ開発のコストをユーザーが負担する必要がある。

図6●Windows Server のサポート期間
図6●Windows Server のサポート期間
Windows Serverのサポート期間は、すべてのバグを無償で修正する「メインストリーム・サポート」と、セキュリティに関するバグのみを無償で修正する「延長サポート」がある
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 Windows 2000 Serverのユーザーは、そろそろ移行を考えたほうがいいだろう。2000年に発売されたWin-dows 2000 Serverは、すでにメインストリーム・サポートが終了している。例えば、「デュアルコアXeon(7000番台)で動作しない」というバグは、修正されないままだ。

 その場合、Windows Serverを使い続けるならば、「2008」への移行を検討してもよさそうだ。サポート期間を考え合わせても、2010年ごろに稼働するシステムをWindowsで構築しようとしている企業は、Windows 2008をメインにする価値はあるだろう。

アプリの互換性、パッケージの対応は?

 OSのアップグレードの度に問題になるのが、アプリケーション互換性の問題だ。.NETで開発したアプリケーションについては、ほぼ問題はなさそう。Windows 2008が備える.NET Framework 3.0は、本体であるCLR(共通言語ランタイム)がバージョン2.0のままだからだ。Webサーバーである「Internet Information Services(IIS) 7」のセキュリティが前バージョンよりも強化されているため、Webアプリケーションは検証が必要だろう。Visual Basic 6については、マイクロソフトがアプリケーション稼働用のランタイムを提供する。

 Windows 2008が備えるセキュリティ関連の機能によって、アプリケーションの設定変更が必要になる場合がある。具体的には、ユーザーのアクセス権限を動的に制御する「ユーザー・アカウント制御(UAC)」が問題になり得る。ほかにも特定のOSファイルやフォルダ、レジストリ・キーの書き換えが制限されるなど、いくつかの注意点がある。マイクロソフトは「Windows VistaおよびWindows Server 2008アプリケーション互換性解説書」という資料を、Webで公開している。

 サード・パーティ製の主要なパッケージやミドルウエアが「2008」で動作可能になるには、出荷から少なくとも半年ほどかかりそうだ。「2008の完成後から3~4カ月内」(日立)、「2008の出荷と同時期か、毎年春に実施している自社製品のバージョンアップで対応」(富士通)。SAPジャパンや日本オラクルも、ほぼ同様のスケジュールを予定しているとみられる。

仮想化を使うためにはどんなライセンスが必要?

 仮想化ソフトを使う場合、OSやアプリケーションのライセンスに注意が必要だ。仮想化ソフトでサーバーを統合したりサーバー間でOSやアプリを移動しようとしても、ライセンスがネックになって、思うような効果を上げられない可能性があるからだ。

 まずWSV自体は無料。物理ハード上のホストOS、ホストOS上で動くゲストOS、ゲストOS上で動作するアプリケーションに関しては、それぞれ異なるライセンスが必要になる。

 ホストOSのライセンスは、使用するハードウエアの台数分が必要。ゲストOSのライセンスは、Windows 2008の「Standard Edition」の場合は、別途購入が必要だ。一方、「Enterprise Edition」の場合は最大4個、「Data- center Edition」は無制限に、ゲストOSとしてWindowsを利用できる。ゲストOS上で動作するアプリケーションのライセンスは、基本的にはインストールした個数分だけ必要である。

 悩ましいのは、物理的なサーバー機やプロセサ数を基準に、ライセンスが決まっているソフトを利用する場合だ。例えば、ある物理サーバーを保守したり処理性能が不足してきたなどの理由で、別のサーバーへゲストOSを一時的に移す場合、ホストOSのライセンスが両方の物理サーバー用に必要になることがある。

 物理的なハードを基準に決められた既存のライセンスは、ハードへの依存を断ち切る技術である仮想化と相容れないケースが少なくない。マイクロソフトだけでなく、ソフト・ベンダー全体で適切なライセンスの形を考えていく時期に来ていると言える。