今,米国でちょっとした話題になっているパソコンがある。台湾を本拠地とするパソコン・メーカー2社が米国で相次いで発売したものだ。1つは,小売最大手の米Wal-Martで発売された199ドルのデスクトップ・パソコン。もう1つは300ドルを切るモデルも用意するというノート・パソコンである。

 これらはいずれもLinuxなどのオープンソース・ソフトを組み込んでおり,低価格を実現している。最大の特徴は,ネット・サービスを利用することを前提に作られていること。「発想が斬新」と今メディアやネットで大いに盛り上がっている。テクノロジ系ニュース・サイトはもちろん,Forbesをはじめとする有力経済紙も注目している。名前はそれぞれ「ジーPC」と「イーPC」。こちらも斬新だ。

徹底的にWebアプリ

 Wal-Martがこの10月31日に販売開始した199ドルのパソコンは,台湾First International Computerの米国子会社Everex製のデスクトップ機。正式名称は「Green gPC(TC2502)」(以下「gPC」,写真1)。CPUは1.5GHzの「VIA C7-D」,512Mバイトのメモリー,80Gバイトのハードディスク,DVD-ROM/CD-RWドライブといった構成である(Wal-Martの製品紹介ページ)。

 このgPCは,「gOS」と呼ぶUbuntu Linux 7.10ベースのOSを搭載している。おもしろいのは初めから用意されている無償のソフトウエアがふんだんにあることだ。Webブラウザの「Firefox」はもちろん,インターネット電話の「Skype」,オフィス・スイートの「OpenOffice.org」,インスタント・メッセージングの「meebo」,iTunesの代替ソフトと言われる「Rhythmbox」も入っている。

 これに加え,GoogleのWebアプリケーションに簡単にアクセスできるアイコンを設けている(写真2)。「Gmail」「Google Calendar」や,ワープロ/表計算の「Docs and Spreadsheets」「Google Maps」,ブログ・サービスの「Blogger」などだ。動画共有の「YouTube」,SNSの「Facebook」もある(関連記事:MSが150億ドルと値踏みした新興SNS「Facebook」の魅力)。

 低価格化を実現するため,Microsoftのソフトを割愛するというパソコンはこれまでにもあったが,gPCの場合はそういう消極的な姿勢ではないところが興味深い。徹底的にオープンソース・ソフトとWebアプリを導入し,Microsoft製品の必要性を排除した。そんな新しさが感じられるパソコンだ。

写真1●EverexのWebサイト   写真2●Green gPCのデスクトップを説明するWebページ
写真1●EverexのWebサイト
Green gPCのコンセプトは「Think Green」。低消費電力とパワーがウリという。
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  写真2●Green gPCのデスクトップを説明するWebページ
画面下に配置されているアイコンで各種ネット・サービスにアクセスできる。
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過去の失敗を研究,今どきのPC誕生

 米InfoWorldの記事がこのgPCについて取材しているのだが,それによると,これまでも低価格のパソコンはいくつも登場し,Wal-Martも販売してきた。後にLinspireに改称したLindowsやMicrotelといったベンダーの製品である。しかしいずれも成功には至らなかった。Everexはそういった過去の失敗を研究した上でgPCを開発したという。

 決め手となったのが,無償で使えるネット・サービスだ(関連記事:Webの情報,どう整理してますか?---はてな,Googleなどの便利なブックマーク・サービス)。これらはLindows/Microtelの時代には普及していなかったものだが,今では機能や種類も充実し,我々ユーザーにとってなじみ深いものになっている。オープンソース・ソフトとこれらネット・サービスを組み合わせることで実現したのが,gPC。今どきのパソコンとはこういう姿なのではと感じさせられる。そんな目新しさがウケているようだ。

 Wal-Martはまず,北米の600店舗でこのgPCをテスト販売するという。またEverexはgPCブランドの展開を拡大していくようで,今度はノート・パソコンも開発する計画。2008年中には12.1~17インチのディスプレイを搭載するノートパソコンを300ドル以下で市場投入したい考えだ(InfoWorldに掲載の記事)。