消費者が自ら作成するブログを使ったマーケティングは、既存のマス広告に比べて費用がかからないというメリットがある反面、使い方を誤れば一気に消費者の反発を招くことになる。消費者参加型のマーケティングを採用する場合には、こういった点に留意する必要がある。

 三洋電機は、閲覧者の多いブロガーを新商品発表会に招いている。デジタル・ムービーの「Xacti」の発表会を2回、掃除機「airsis」、洗濯機「AQUA」を1回ずつ、過去1年に合計4回の発表会にブロガーを招待した。強制はしないが、発表会の記事を書いてもらうよう依頼するという。

 三洋電機は経営再建中ということもあり「費用のかかるテレビ・コマーシャルはなかなか多用できない。当初は実験的に始めたが、消費者の反応が直に分かることを含め思った以上に得るものが多かった」と国内マーケティング本部マーケティング統括部の村上健 事業戦略部長は語る。

 掃除機の発表会には主婦ブロガーを招いた。すると“かけごごち”を確かめるなど、記者発表会では考えられない光景が見られた。「自分が使うとしたら、という観点で記事を書いてもらえるのがよかった」(村上部長)

 村上部長は「ブロガーを招く以上、根拠のない誹謗でなければ、商品の悪い面や改善が必要な点をどんどん書き込んでもらって構わない。まずは話題になることが重要」とも語る。たとえ悪評がたっても、迅速な対応をとることでかえって消費者とのきずなは強まる可能性すらあると考えているのだ。

 実際に同社にはこういった経験がある。今年7月、防水機能が目玉であるXactiの新製品の発表会に関連した出来事だ。

 この時、あるブロガーが操作を誤り「防水機能付きのはずなのに、水が本体に漏れた」と自分のブログに動画付きで掲載したのである。これに対し三洋電機はいたずらに否定するのではなく、発表会の際にブロガーが触った試作機は操作が分かりづらかったことを翌日に謝罪し、正しい操作方法をWebサイトに動画で公開した。さらに製品の出荷時には、操作方法を誤らないように注意書きしたシールを貼るようにした。

 結果的にはこの取り組みがブロガーに評価された(図1)。Xactiの記者会見に出席したブロガーのジェット☆ダイスケ氏も「結果として三洋電機は消費者にまじめに向き合っていることをアピールできた」と一連のやり取りを評価する。

図1●
図1●三洋電機はブロガー向け発表会を開いて商品をプロモーションするだけでなく、ネット上の反応を商品作りに生かしている
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 三洋電機以外でも、ブロガー向け発表会は一般的になりつつある。日産自動車は昨年12月にスカイラインの発表会に、JR東海は新型新幹線「N700系」の試乗会にブロガーを招いた。今年8月にはソニーも販売代理店向けのイベント「ディーラー・コンベンション」にブロガーを招待した。