今や欠かすことのできないコミュニケーション・ツールとなった電子メール。普段は注意したことがないかもしれないが,その裏ではメールをやりとりする目的で取り決められたプロトコルが働いている。今回は,電子メールで使われているプロトコルを掘り下げていこう。

2種類のプロトコルが使われている

 一口にメールで使われているプロトコルといっても,実は送信と受信では異なるプロトコルを使う。メールの送信に使うのは「SMTP」(simple mail transfer protocol)と呼ばれるプロトコルで,受信に使うのは「POP3」(post office protocol version 3)というプロトコルだ。

 少し細かく説明すると,SMTPは二つの場面で使われている。パソコンにインストールされたメール・ソフト(メーラー)からメール・サーバーにメールを送るときと,メール・サーバーから別のメール・サーバーへメールを中継するときだ。一方のPOP3は,メール・サーバーからパソコンのメーラーに,自分あてのメールを取り込むときに使う。つまり,SMTPとPOP3を組み合わせて使うことで,はじめて送信元のユーザーからあて先のユーザーにメールが届くというわけだ。

 最近はWebブラウザでメールをチェックできるWebメールが広く使われているが,こちらはpp.164-175で解説したWebアクセス用プロトコル「HTTP」(hypertext transfer protocol)を使う。今回は,メーラーで使われるSMTPとPOP3に絞って学ぼう。

何の情報をいつ送るのかを知ろう

 メールの基本プロトコルであるSMTPとPOP3を理解すると,メールがあて先まで届くしくみだけでなく,自分が加入しているプロバイダの迷惑メール対策のしくみも見えてくる。ぜひ,Lesson1からLesson4まで読み通してプロトコルの理解を深めてほしい。

 Lesson1では,メールの送受信でSMTPとPOP3が使い分けられていることを説明する。Lesson1を読めば,なぜ使い分ける必要があるのかがわかるはずだ。

 続くLesson2とLesson3では,SMTPとPOP3について詳しく説明する。SMTPではメールを送信するための基本的な手順が決められている。一方,POP3でメールの一覧を表示したり,メールを取り込んだりするなどの順序は特に決められていない。ただし,メールを受信するときは三つのステップを踏むので,この三つのステップをしっかり押さえておきたい。

 最後のLesson4は,迷惑メール対策として不正なユーザーにメールを送らせないようにするため,どのようにプロトコルを強化しているのかを取り上げる。Lesson4を読めば,どのようなしくみが迷惑メール対策のポイントなのか理解できる。

 最後に,SMTPとPOP3のしくみと迷惑メール対策の理解度をチェックする修了テストで腕試しをしておこう。