春の入学・行楽シーズンに向けてにぎわいを見せるビデオカメラ商戦。動画を記録するメディアが多様化し(上)、ハードディスクと組み合わせたハイブリッドタイプも人気を集め始めた(左は日立製作所の「DZ-HS503」) |
海外から単身赴任中の調査員Bは、幼い子供たちの成長を撮影するのが、一番の楽しみ。「帰国するたびに撮りだめしてパソコンで編集し、DVDに焼いて家族に送るんです」。
デジタル光学機器が好きな国際連合大学の安井至副学長が、この話題を聞き逃すはずがない。「本体が軽くコンパクトになってきたので、私も出張によく持っていくようになった」と、昨年購入した愛機を取り出す。趣味で使う調査員Aも加わって、デジタルビデオカメラ(以下、ビデオカメラ)談義に花が咲き始めた。
これを遠巻きに見ていたのは、唯一、ビデオカメラを持っていない調査員C。「撮影後の動画を記録するメディアの消費が少々気になる。製品のライフサイクルを通じた環境負荷を調べるLCA(ライフサイクルアセスメント)を活用すれば、何か課題が見えるのでは」と割り込んだ。
使用時の環境負荷はわずか
調査員はまず、メーカー自身が発表するビデオカメラ製造時のCO2排出量に関するデータがないか、調べ始めた。しかし、参考になりそうな情報が見つからない。LCAの検討過程で、しばしばぶち当たる壁だ。
調査員Cは、「金属や樹脂の塊のような製品なら素材当たりの重量を類推してCO2排出量をはじき出せるが、ビデオカメラは電子部品で成り立っているような製品。CO2排出量の大半を占めると思われる半導体の点数や個々の製造負荷がわからないので、計算が難しい」と考え込む。
ここで現実的な対応策を示したのは安井副学長。「類似した製品で代用して議論を進めるのも手だ」と、部品や構造が類似していると思われるデジタルカメラに着目。カメラに造詣が深い調査員Aが、「デジカメなら『エコリーフ』で、LCAデータが公開されているはず」と先導した。
エコリーフは、社団法人・産業環境管理協会が運営する環境ラベル。同協会が定めた基準に従ってメーカーが製品ごとのLCAデータを算出し、これを同協会がインターネットのウェブサイトなどで公開している。
調査員は、エコリーフのウェブサイトに掲載されている一眼レフのデジカメのLCAデータを基に、製造にかかわるCO2排出量を抽出。さらに、「エコリーフの基準では、液晶ディスプレイの製造負荷が十分に考慮されていない」(調査員A)との判断から、別の資料から液晶ディスプレイを加え、ビデオカメラの素材調達から製品組み立てまでの工程に伴うCO2排出量を、約19kgと仮定した。
続けて、メディアの消費に伴う環境負荷の検討が始まった。従来はミニDVテープに記録する方式のビデオカメラが大半だったが、最近は8cmDVDディスクやSDメモリーカード、ハードディスクドライブ(以下、HDD)に記録する機種もある。
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構成/建野友保 イラスト/斉藤よしのぶ |