NGN構築/サービス基盤として期待

 これまでにNGNとJSLEEの関連が明確に語られたことはほとんどなかったと言ってよい。その背景は,NGNの標準化活動が本格化した時期とJAINのコミュニティ活動が当初の目的を達成して収束する時期が重なったことのほか,JAINコミュニティがITU(国際電気通信連合)やETSI(欧州電気通信標準化協会)などの標準化団体と明確な協業関係を築かなかったことなどが,要因になったと推測される。

 しかしJSLEEは,NGNのサービス・ストラタム(の特に上位部分)の構築基盤としての可能性を持っている。今後はANI(application network interface)を利用したアプリケーションを構築する際のオープンな基盤としても期待されている。つまりNGNそのものの構築基盤として,そしてNGNを利用する側のアプリケーション・サービス基盤としての可能性を持っていることになる(図4)。

図4●JSLEEの今後の適用分野
図4●JSLEEの今後の適用分野
JSLEEはNGNそのものの構築基盤と,NGNを利用するアプリケーション・サービス基盤としての可能性を持つ。
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 ここでOMAで検討されているアーキテクチャが,NGNのアプリケーション領域のモデルとして期待できるとの見方がある。OMAで提案されているOSEでは様々なサービスを実行するための共通部品を「イネーブラ」と呼ぶ。一つのサービスは複数のイネーブラの組み合わせで実現される。

 その一方,JSLEEの根本的発想には,サービスのコンポーネント化や複数コンポーネントによるサービス構成,コンポーネント再利用性の実現などがある。つまりOSEとJSLEEのアーキテクチャに,容易に共通性を見出せる。

 現に仕様策定中のJSLEE 1.1のドキュメントでは,JSLEEにOMAのイネーブラ実装技術としての可能性があることが言及されている。OSEのアーキテクチャや,ベンダー独自ではないイネーブラをスマートに実装する,オープンな基盤としてのJSLEEの可能性が高まっている。

レガシー網との連携が容易なJSLEE

 サービス・ストラタムの構成要素であるIMSにおけるJSLEEの可能性は,JAINコミュニティが活動していたころから積極的に語られていた。JSLEEはオープンなだけでなく,高品質でスケーラブルかつ高い信頼性と可用性を持つSIPアプリケーション・サーバーの構築基盤として活用できるからだ。

 リソース・アダプタ・アーキテクチャを取るJSLEEは,プラットフォームとしての拡張性を持つため,ISCに加えてDIAMETERなどのプロトコルやレガシー網と,「一貫した方法論とアーキテクチャで」連携できるという強みがある。

 複数のSIP ASオーケストレーションを実現するSCIMや,IMS網からCAMELサービスを起動するIM-SSFなどのシステムの基盤としても最適である。オープンクラウドは,既に自社のJSLEEアプリケーション・サーバー上にSCIMとIM/SSFを製品化している(図5)。

図5●IM-SSFの構造
図5●IM-SSFの構造
オープンクラウドが製品化した「Rhino IM-SSF」の構造を例として挙げた。既存のSCPノードをIMSでも再利用でき,一人のユーザーによる複数網で共通のサービス利用や,新旧を問わない様々な機器との連携,既存網からSIP AS(計画中)の利用が可能といった特徴を持つ。
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