メール誤送信の根本的な解決策は,メール送信に際してのフィルタリングである。社外に送信する前の水際で誤送信を検出し,送信を止める方法だ。

 具体的な対策は大きく分けると2通りある(図3)。一つは,メール・クライアントから送信する際のフィルタリング。クライアント・パソコンに専用のソフトをインストールしておくと,ユーザーがメールを出す際に誤送信についての注意を促す。主にあて先の入力ミスを防ぐのに効果的である。

図3●誤送信対策をうたう主な製品
図3●誤送信対策をうたう主な製品
誤送信対策は大別して,(1)メール・クライアントから送信する際のフィルタリング,(2)メール・サーバーの手前でのフィルタリングの2通りある。
[画像のクリックで拡大表示]

 もう一つは,メール・サーバーから社外に送信する前にフィルタリングする方法である。送信者の認識不足や勘違いによる誤送信を防ぐ際に役立つ。エンドユーザーから見てメール・サーバーの手前に専用サーバーを設置。ここでメールの内容を解析し,ポリシーに合わないものを自動的に止める。

送信時にアドレス入力ミスを検出

 送信に先だって誤送信への気付きを本人に促す機能を持った製品は,メール・クライアントにアドオンする製品と,Ajaxなどを使うWebメール製品の2種類ある。具体的には,アドオン製品がNTTソフトウェアの「CipherCraft/Mail クライアント版」,日立ソフトウェアエンジニアリングの「MaCoTo for Outlook」など。WebメールにはNECソフトの「WitchyMail」や富士通長野システムエンジニアリング(富士通長野)の「SYNCDOT/WebMailer」などがある。

 これらの製品では,エンドユーザーあるいはシステム管理者があらかじめフィルタリングEポリシーを設定する。送信しようとしているメールがポリシーに合っていないと警告画面を表示する。警告画面には,どの部分に問題がありそうかが具体的に表示され,送信者が確認できる。

 ユーザー・インタフェースこそ異なるものの,設定できるフィルタリング・ポリシーはどの製品もほとんど同じ。よく使われるのは,「社外アドレスへの送信」「送信件数の上限」「添付ファイルや特定キーワードの有無」である。

 社外アドレスへの送信では,文字通り,送信先として社外のメール・アドレスを含んでいるかどうかを判断する。送信件数の上限は1回の操作で送れるメールの数。この数を小さく設定することで,同報の際に発生しやすいメール・アドレス漏えいを最小限に抑えられる。また,添付ファイルやキーワードの有無は,いわゆるコンテンツEフィルタリングと同様の仕組みをクライアント上で実現するものである(写真1上)。

写真1●メール送信者への気付きを促す機能の例
写真1●メール送信者への気付きを促す機能の例
[画像のクリックで拡大表示]

 SYNCDOT/WebMailerはほかの製品に比べて一歩進んだ仕組みを持つ。送信メールのあて先が正しいかどうかをチェックする「送信先間違い防止機能」である(写真1下)。

 まずあて先に入力されたメール・アドレスがアドレス帳に登録されているかどうかをチェック。アドレス帳に登録された企業名と氏名がメール本文中の最初の10行以内に記述されていないと,警告ダイアログが表示される。「同じような名前を持つユーザーに送信する場合は,この機能によって送信ミスを大幅に減らせる」(石橋潤一広域ソリューション事業部メッセージングソリューション部長)。

豆知識
Office文書の添付時は「変更履歴」に注意

 各種資料を相手に渡す場合,WordやExcelファイルを添付して送信するケースは珍しくない。しかしこの方法は場合によっては深刻な情報漏えいにつながる恐れがあるので注意しよう。

 気を付けたいのは,例えばWordに搭載されている変更履歴機能やコメント機能だ。この機能を無効にし忘れると,送信相手に変更履歴などをそのまま見られてしまう恐れがある。同じ文書を使いまわして顧客や取引先ごとの文書を作るような場合,ほかにどの企業と取引しているかや,その取引内容の履歴が漏れてしまいかねない。Excelの場合,一般向けの見積書と優良顧客向けの見積書を,同じファイルでそれぞれのシートごとに管理するユーザーも少なくない。うっかり見逃してしまう可能性があるので要注意だ。

 さらに,WordやExcelなどのOffice文書には作成者の情報がプロパティとして記録される。取引先が作ったものをベースにして作成した場合は,その取引先の担当者の個人情報が記録されるから,事前にチェックしておく方がいいだろう。

 最新版のOffice 2007を使っている場合は,ドキュメント検査機能を使えば,変更履歴やコメント,非表示の文字列,個人情報があるかどうかを容易に確認できる。こうした機能を利用できないなら,PDFに変換してから送信するなどの配慮が必要だろう。