米QUALCOMMは,米Intelなどが推進するモバイルWiMAXに対抗するモバイルインターネット向けのソリューション「Gobi」を発表した。無線ネットワークには,第3世代移動通信(3G)方式によるデータ通信を活用する。3Gの主要2規格(CDMA2000のEV-DO Rev.AとUMTS HSPA)に対応するチップセット「MDM1000」を用意して,ノートパソコンへの組み込みを狙っている。提供するソリューションとしては,チップセットのほかに関連ソフトウエア,API,参照デザインなどからなる。さらにチップセットは,位置情報を基にしたアプリケーションに対応するためGPS(全地球測位システム)にも対応する。

 Gobiの強みは,既にある3Gネットワークを活用できることである。現在モバイルWiMAXに国内外の注目が集まっているが,世界中で利用できるようになるには,もう少し時間がかかる。EV-DOとHSPAの両対応であれば,多くの地域ですぐにでも利用できる。

 米国ではSprint NextelとClearwireの両社が,モバイルWiMAXネットワークを急ピッチで整備している。しかし,米国のすべての移動体通信事業者がモバイルWiMAX事業にインフラの構築から参画しているわけではなく,Gobiプロジェクトはそうした事業者から大きな期待を集めそうだ。QUALCOMMとしては,EV-DOとUMTS HSPAを足がかりにモバイルインターネットで先行し,同社が中心になって推進してきたUMB(Ultra Mobile Broadband)など3.9Gサービスへと展開していくことになるだろう。

 Gobiを発表する一方でQUALCOMMは,ベースバンド処理用のプラットフォームの開発も着々と進めている。例えば2006年11月には,「Snapdragon」を発表した。1GHz動作可能なプロセッサー「Scorpion」や600MHz動作のDSPなどから構成される。2007年5月に開催された「Microprocessor Forum 2007」でQUALCOMMはScorpionについて,CIFサイズ(352×288画素)で30フレーム/秒の「MPEG-4」動画の復号化・符号化を同時に行っても,800MHz動作分の演算能力が余るほどの処理能力を持つことを明らかにしている。

 ScorpionはARMv7互換プロセッサーであり,メインのターゲットは携帯電話機やいわゆるスマートフォンである。しかし,「Windows Vista」などを搭載したノートパソコンでなくてもこれだけの処理能力のプロセッサーがあれば,かなりのことができそうだ。Webアプリケーションの伸張などもあり,むしろノートパソコンの形をしながら中身はスマートフォンとほとんど同じという商品もあり得るだろう。こうしたなかでGobiは,モバイルインターネットにおける「Intel対QUALCOMM」の競争における重要な位置付けを担うことになりそうだ。