写真8 組み立て工程の様子
写真8 組み立て工程の様子
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 車載通信機器などを製造・販売するヨコオが、日本での成功体験をもとに中国でトヨタ流改善を始めたのは2006年。その中心人物である多胡 一男氏に、取り組みの詳細をほぼリアルタイムでメルマガに寄稿してもらった。1年前の話ではあるが、現地に改善活動を根づかせるためには何が課題となるのかなど、中国で改善に取り組もうとする企業にとっては大いに参考になるだろう(日経情報ストラテジー編集部)。

多胡 一男
東莞友華汽車配件有限公司(ヨコオの中国法人) OJT-Sプロジェクト 経理担当


 皆さん、こんにちは。中国からの第8回となります。
(原文は2006年12月27日付け日経情報ストラテジー・メール)

 11月から友華汽車におけるOJT-S(トヨタ生産方式に基づく職場改善・人材育成)活動の第2期がスタートしました。今回は、第2期の全体像と赴任当初に立てた計画との違いなどをお話ししたいと思います。

 もともと、第2期では取り組む対象製品を一つ増やす予定でした。第1期の対象製品については「かんばん」導入などによる「さらなるカイゼンと定着」を進め、新しい製品群に対しては「トヨタ生産方式によるものづくり(以下、TPS)」の基本活動を推進することにしていました。しかし、10月後半に行われたOJT-S推進の責任者による進ちょく状況の確認と今後の進め方についての検討の結果、第2期活動を大幅に修正することになりました。

■第2期活動

 第1期は1製品の生産工程のカイゼンでしたが、第2期は3製品5テーマへと拡大し、OJT-Sに対する期待の大きさと結果に対する責任の重さを感じながらのスタートとなりました。

 推進メンバーとして日本から倉庫・物流カイゼンで友華汽車に赴任経験のある清水さんが加わり、現地スタッフもテーマごとに専任メンバーを強化し、総勢16人の体制で臨むこととなりました。

 第2期のスタートに当たり、5つのテーマごとに職場の様子をお伝えします。

【1】マイクロアンテナ

 第1期から引き続き活動を展開する製品です。ここでのテーマは、第1期で実施してきた「TPS」によるものづくりの考え方を現場へ定着させることへの支援が中心となります。また「かんばん」による工程内在庫などを進め、より変化に強い生産現場の構築を狙っています。

【2】GPSアンテナ

 GPS受信用アンテナとETC受信用アンテナを生産する職場で、ここでは「TPS」のものづくりの考え方を中心に、5S/標準作業の設定/作業者教育による定着と、職場管理の見える化を展開していきます。

【3】中継コード

 車内の受信側(アンテナ)と本体(ラジオ)との信号用の各種ケーブルを生産する職場です。ここの製品は当工場創業時の最初の製品であり、人員、スペースとも最大の職場です。本来は第3期での活動予定でしたが、前倒しでスタートを切りました。

 GPSと同様に「TPS」のものづくりの考え方を中心に、5S/標準作業の設定/作業者教育による定着と職場管理の見える化を展開していきます。この製品は加工工程が大きく3つに分かれることから、次工程への運搬が常に発生するため、物流の簡素化も課題の一つです。

【4】倉庫

 マイクロアンテナとGPSアンテナの倉庫が隣接して配置されていることから、第2期でカイゼン活動に取り組むことにしました。ここは部品倉庫なので、5S/標準作業の設定をまず実施し、在庫状況を見える化することによって生産工程への部品払い出しをタイムリーに行える職場へと変えていきます。

 また、マイクロアンテナ部品をモデルとして組み立て工程との「後工程引き取りかんばん」、成形工程への「部品引き取りかんばん」の導入を主導するグループです。

【5】成形工程

 社内で使用する樹脂成形部品のほとんどを供給する職場で、タテ型・ヨコ型の成形機が多数可動しています。ここでの部品の良しあしは生産工程に直接影響するため、日本のヨコオの生産技術部メンバーが定期的に出張し、「成形工程カイゼンプロジェクト」として最適成形条件設定やローカルメンバーへの技術指導を実施しています。我々OJT-Sメンバーも協業して、設定された条件・標準の現場への展開と定着を進めていきます。

■第2期がスタートして

 第2期のスタートを機に、日本で研修をしたローカルのOJT-Sメンバー4人の成長が中国でのOJT-S展開と定着に不可欠なことから、テーマリーダーとして新メンバーへのOJTによるカイゼン活動を実践させることとしました。私と一緒に現地入りした武田さんと清水さんは各テーマでの課題解決の支援と併せ、「かんばん方式」の導入を横断的に展開する準備を始めています。

 私はというと「中継コード」カイゼンをメインに全体の進ちょく管理をしていますが、第1期と違って5テーマが同時進行しているため、テーマごとの課題が頭の中で交差し少々混乱気味でのスタートとなっています。

■赴任生活

 前回は「まだまだ半袖で十分過せる気温です」とお話ししましたが、このところ朝晩はめっきり冷え込んできて長袖のシャツが欲しい気温になってきました。そうはいっても日中は半袖で十分過ごせています。

 最近、武田さんがリモコンヘリにはまっていて、休日に飛ばす努力をしていますが、なかなかうまく飛行しません。次回では、優雅に飛行するヘリの様子が伝えられるといいのですが…。私は、まずはリモコンカーから始めるべく、次の休日あたり買い出しに行くつもりです。

 では、今回はこの辺で。


多胡 一男(たご かずお)
1981年、株式会社ヨコオ(車載通信機器・無線通信機器などの製造・販売)入社。2006年6月より同社中国工場である東莞友華汽車配件有限公司にてOJT-Sプロジェクト 経理担当。ヨコオでは、人事部門にて、人事システム革新テーマ等に取り組む。その後、車載通信機器生産部門責任者に就任。2004年には韓国での合弁会社の製造立ち上げ責任者として駐在。2005年からはOJT-Sプロジェクト(トヨタ生産方式に基づく職場改善・人材育成プロジェクト)に参画し、製造現場のものづくりシステム改善に取り組み、現在同社中国工場への展開で奮闘している。同社のWebサイトはこちら