ちょうど1年前,去年の10月にWindows Vistaのレビューの準備を始めたころは,レビュー結果がどうなるか予想がつかなかった。しかし,できるだけ先入観に囚われないように注意してVistaを調べた結果,これがかなり素晴らしいOSであることがわかった。完璧,とは言わないが,Windows XPユーザーにとっては劇的でアップグレードに値する製品だ。今ではすっかりVistaを気に入っており,もうXPに戻れないだろう。今の筆者には,XPは古臭くて,機能的にも劣っているOSにしか見えない。

 それでも1年前に執筆したレビューでは,Vistaについて1つ大きな不安があった。Microsoftは,64ビット版(x64版)の機能を,Vistaの主流である32ビット版と同等にしようと努力していたが,筆者から見れば2006年後半の64ビット版の状況はあまり芳しくなかった。

 確かにVista x64のハードウエアとソフトウエアの互換性は予想よりも大幅に改善されており,明らかに「Windows XP x64 Professional Edition」のハードウエアとソフトウエアの互換性よりもずっと優れていた。しかし,問題がまったくなかったわけではない。偏りがある調査かもしれないが,筆者がふだん使っているアプリケーションやゲーム,ハードウエアの動作テストで,互換性のない部分がたくさん見つかったのだ。

 この手のトラブルは深刻だ。なぜなら重大な非互換性がたった1つ存在するだけで,OSが台無しになってしまうからだ。一番よく使うアプリケーションやゲームが正常に動作しないOSに,誰が手間をかけてアップグレードしようとするだろうか。接続しているハードウエアの半分を構成できないようなシステムを誰が使うだろうか。Vista x64には様々な長所があるが,まだまだ脚光を浴びることができるレベルには到達していないと筆者は考えていた。

 そして1年が経過した。何が変わっただろうか。実は,何もかもが変わっていたのだ。

互換性の問題がほぼ解消

 1年の間にこれほどの変貌を遂げるとは,誰が想像しただろうか。1年前のVistaのx64版は,高い技術力を持った一部のユーザーを除けば,基本的には誰も使いたがらないレベルだった。しかしその後,膨大な量の互換性の問題が修正され,主流ソリューションと言えるレベルにまで改善された。いや,主流は言い過ぎか。しかし,筆者が安心してx64版を推奨できるユーザーの範囲が,1年前に比べて大幅に拡大しているのは確かだ。

 Vista x64をテストするに当たって,最初にこれまでメインで使っていたデスクトップPCの中味を消去した。このPCは,2006年12月初めにWindows Vista Ultimateの32ビット版をインストールして以来,まったく問題を起こすことなく動作していた。その間はMedia Center PCとして,自宅兼オフィスのケーブルテレビ用チューナを接続するだけでなく,書斎のXbox 360 Media Center Extenderにコンテンツをリモートで提供する役目も果たしていた。つまり,この9カ月間,筆者の家族がこのPCをメインのテレビとして使っていたが,何の問題も起きなかった。

 2007年10月初めに,もう1台のPCにVista Home PremiumをインストールしてTVカードを実装し,Media Centerとしての役目はこちらのPCに移した。その後で重要なデータをすべてバックアップして,中味を消去してから,Vista Ultimate x64をインストールした。

 これまでのところ,このPCにインストールしたx64版の使い心地は素晴らしいの一言に尽きる。OSをインストールした後の最初のWindows Updateが終わったときには,このシステムに接続していたすべてのハードウエアが正常に認識され,適切なドライバが提供されていた。今,このマシンのデバイス・マネージャは,Windowsがインストールされているあらゆるマシンの目標である「完璧にクリーンな状態」で表示されている。最初の段階で成功を収めたことに気を良くして,次に「常時インストール」しておくアプリケーションのリスト()の処理を始めた。その結果も,またもや完璧だった。ほとんどすべてのアプリケーションのインストールが成功し,正常に動作した。実に素晴らしい。

 あまりに素晴らしい結果が得られたので,次に愛用しているワイド・スクリーンのノートブック「Lenovo ThinkPad T61」の中味を消去して,同じようにVista x64をインストールすることにした。途中で多少トラブルはあったが,1つ大きな問題があったことを除けば,十分満足できる結果が得られた。この問題については,x64に原因があるのかどうかはまだ特定できていない。

 どんな問題かというと,Vista Ultimate x64をインストールした後で,ドライバが必要なハードウエア・デバイスが大量に見つかったのだ。幸いなことに,LenovoのWebサイトでは,必要なドライバや関連するThinkPad固有のユーティリティをインストールしてくれるSystem Updateアプリケーションをダウンロードできる。System Updateはx64で完璧に動作して,適切なドライバと筆者が選択したいくつかのユーティリティ(ネットワーキング用のAccess Connections,ドライブ・ベイ用のEasy Eject,Power Managerなど)がすべてインストールされた。

ThinkPadではスリープからの復帰に不具合

 スタートが好調だったのでアプリケーションのインストールを開始したが,これもデスクトップのときと同じように,何の問題もなく処理が終了したように見えた。しかし,ここで1つ問題が発生した。ThinkPadが,スリープ状態から戻ったときにクラッシュするようになったのだ。

 電源管理の設定をいろいろいじってみたり,念のためにメモリー・テストまでしてみたりしたが問題は解決しなかったので,次にスリープ・モードをオフにして,ハイバネーション(休止状態)を使うことで問題が解決するかどうかを試してみた。しかしこれでも問題は解決しなかった。クラッシュはランダムに発生し,省電力状態から復帰するときは,ほぼ毎回のようにクラッシュが発生した。そのほとんどでブルー・スクリーンが表示されたが,筆者がこれまでVistaを使ってきた経験では,ブルー・スクリーンが表示されることは非常にまれである。

 その週末にワシントンD.C.を訪れる際にこのThinkPadを持っていくつもりだったので,この問題を特定しようと努力してみたが,今のところ結果は出ていない。これがマシン固有またはドライバ固有の問題なのか,あるいは文字どおりx64限定の問題なのかはまだわからない。ブルー・スクリーンには「clfs.sys」が原因だと表示されているが,これはVistaで新しく追加された「Common Log File System Driver」というコンポーネントだ。まだ何が問題なのかは不明だが,念のために書いておくと,ワシントンD.C.に向けて出発してから帰宅するまで,このノートブックは大きなトラブルを起こすこともなく,なんとか無事に動作してくれた。

 先日,Mac OS X 10.5 Leopardを搭載したMacBookにデュアルブートでVistaをインストールして,MacBookでもx64をテストしようと思ったが,AppleがサポートしているVistaは32ビット版だけだった。これでテストに使えるマシンはほとんどなくなったが,あと1台使えそうなThinkPadがある。少なくともあと1台のノートブックでx64をテストするつもりだが,今のところはThinkPadで発生している問題の原因は不明である。