サプライチェーン管理の本命と見られているUHF帯対応の無線ICタグ。それを多様な現場に導入できるようにする関連機器や新技術が「第9回自動認識総合展」(9月開催)で登場した。これまで選択肢が狭かったハンディ型端末が一気に充実する。

 「当社の業務に合ったハンディ型端末がない」――。UHF帯ICタグ・システムの導入で、多くのシステム担当者が悩む問題である。

 UHF帯は、最大3~5mと通信距離が長いのが特徴で、ゲート型のリーダーを設置して、一括して読み取るといった用途に向く。物流センターを出入りする商品の一括認識などに適している。しかし実際の物流現場では、商品のケースなどを1つずつ、ピッキングしたり検品したりする作業もある。個々のICタグを手軽に読めるハンディ端末が必要になるのだ。

 そのハンディ端末の選択肢が狭かったのが、ここにきて大手端末ベンダーが相次いで製品を投入してきた。UHF帯ICタグ市場の本格的な立ち上がりを慎重に待っていたのが、ようやく腰を上げた形だ。提供ベンダーは現状の3社程度から、来年春には10社近くにまで増える見込み。いずれもISO18000-6 タイプC(Gen 2)に対応する。

 まずデンソーウェーブが8月末に「BHT-232QWU-CE」の出荷を始め、それを自動認識総合展で展示した。Windows CE搭載で、240×320ドットと大きい液晶画面を持つ。ただしハンドガン型で、サイズが90×186×175mmと大型である。免許が要らない低出力型で通信距離は10~15cm。価格は30万円台の前半から後半になる。

 ウェルキャット(本社・東京都品川区)と松下電器産業はそれぞれ小型のハンディ端末を参考出展した。ウェルキャットの「XIT-160-BR」は、電波出力が10mWを超える免許が必要な高出力型で、通信距離が50~60cmと長い(写真1)。「UHF帯ではハンディ型でも離れた場所から読みたいというニーズが多い」(ウェルキャットの笹尾豊RFID営業部部長)という。サイズも58×162×46.5mmと小型(外付けアンテナを除く)。年内にも出荷するが価格は未定だ。

写真1●ウェルキャットの高出力型リーダー
写真1●ウェルキャットの高出力型リーダー

 松下電器産業の「JT-H252」はサイズがウェルキャット製と同程度とコンパクトで、価格が20万~25万円程度と安い(写真2)。低出力型として、早ければ08年春にも出荷する。このほか韓国のD&Sテクノロジがコンパクトフラッシュ型を、台湾のユニテックがハンドガン型の端末を出展していた。出荷はそれぞれ年末と9月末を予定する。

写真2●松下電器産業の低出力型リーダー
写真2●松下電器産業の低出力型リーダー

 このほかオムロンは、UHF帯のICタグとリーダー・アンテナ間の距離を測定する技術を会場でお披露目した。通信距離が長いUHF帯は、想定外の場所の ICタグまで読み取ってしまう欠点がある。ICタグまでの距離が分かれば、アンテナを複数設置して特定の範囲だけ読み取るといったことも可能になる。IC タグまでの距離は、952M~954MHzの両端のチャンネルで電波を発射し、ICタグからの反射波の位相差を用いて計算する。08年内の製品化を予定する。