アカウントプランに盛り込む情報のうち、重要な情報の一つが「アカウント(顧客)の概要」です。役員交代や事業所の新設・移転など顧客の基本情報の変化や、顧客の事業プラン、顧客とのリレーション状況などを漏れなく記載していくことで、顧客の課題やソリューションが明確になり、営業活動の品質アップにつながります。

 アカウントプランに盛り込む内容については、「アカウントの概要」と「営業活動についてのプラン」に大きく分けることができます。今回は、アカウントの概要として盛り込む内容について解説します。もちろん、これが唯一すべてというわけではありませんので、アカウントプラン作成の際の目安と考えてください。

 アカウントプランというからには、営業パーソンがアカウント、つまり顧客のことをよく理解していることがプラン作成の前提です。営業パーソンにとってアカウントプランとは、顧客把握度のリトマス試験紙のようなものなのです。別の言い方をすれば、日常の営業活動で顧客情報を収集し、アカウントプランの完成度を高める活動こそが、実は営業活動の成果を高めることに通じるのです。

 それでは、アカウントプランに盛り込むアカウントの概要の具体的な説明を通じて、そのことを明らかにしていきましょう。

「顧客の基本情報」は変化情報に注意

 まず初めに、顧客に関する基本的な情報を整備します。アカウントプランを作るような顧客の情報なら、ほとんどの場合データベース化されているはずです。ところが、データがタイムリーに更新されておらず、顧客の現状を正確に反映していないことも少なくありません。アカウントプランの作成に当たっては、最新情報であるかどうかを確認して、データ更新も行うようにしましょう。

 顧客の基本情報に関する内容は、に示した通り多くの項目が考えられます。これらの情報の中で特に留意すべきことは、変化のあった情報についてです。業績の推移はもちろんのこと、役員の交代や事業所の新設・移転などは、顧客にとって大きな意味を持っています。基本情報の変化は、経営政策の具体化や変更の反映として現れることになるからです。

図●アカウントプランに盛り込む「アカウントの概要」の一例
図●アカウントプランに盛り込む「アカウントの概要」の一例
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 ですから、基本情報の変化がどのような意味を持つのかを、営業パーソンが十分理解しておくことはとても大切なことです。そして基本情報が変更になった場合、その背景にあるものは何か、変化によってどのような課題が顧客の中で起こり得るのか、といった仮説を立ててみるのです。その仮説に基づき、顧客情報の収集や提案活動を行い、仮説を検証するプロセスを経ることによって、ソリューション営業を実践することができるようになります。

 実は、顧客の基本情報が変わってしまったことを事後につかむことよりも、むしろこれから起こるであろう変化を、営業パーソンがつかんでいることの方が大切です。顧客内部でこれから起こる変化は、ソリューションプロバイダにとって絶好のビジネスチャンスになる可能性を秘めているからです。アカウントプランに基づいて社内検討会を実施する場合には、基本情報の変更の意味やその及ぼす影響について、十分討議するようにしましょう。

「顧客の外部環境」から課題をとらえよ

 顧客を取り巻く外部環境の変化は、ソリューションを考えるうえで重要な意味を持っています。「経営とは環境適応業である」と言われるように、外部環境の変化が顧客の対応行動を要求するからです。顧客の外部環境については次の視点から検討し、顧客の課題を抽出します。

一般環境:政治・経済・法律・文化などの諸要素について、その動向を整理するとともに、今後の傾向予測や顧客に与えるインパクトを検討します。
業界環境:顧客の業界の構造、需要・供給状況、商品や技術などの諸要素について、その動向を整理するとともに、今後の傾向予測や顧客に与えるインパクトを検討します。
顧客環境:顧客がビジネスの対象としている企業や消費者(顧客の顧客)について、その動向を整理するとともに、今後の傾向予測や顧客に与えるインパクトを検討します。
競争者環境:顧客の競争者について、組織面や人材、商品内容、支持顧客、保有する技術、利益動向などを整理するとともに、今後の傾向予測や顧客に与えるインパクトを検討します。