英国南西部は欧州でも有数の通信関連ベンダーが集まっている地区である。この地で開催されたイベント「Wireless 2.0」にはフェムトセル関連ベンダーが数多く参加し,注目を集めていた。フェムトセルは既に開発段階を過ぎ,商用化に向かって進みだしている様子がうかがえた。

 9月末,英国南西部の都市ブリストルで,同地区に集まる通信関連企業を中心としたイベント「Wireless 2.0」が開催された。最も注目を集めたのは,超小型携帯電話基地局である「フェムトセル」だ。英国南西部にはソフトバンク・グループのトライアルに参加するフェムトセル・ベンダーである英ユビキシスや,フェムトセルのチップセット・ベンダーである英ピコチップ・デザインズが本拠を構えている。これらの企業がイベントで自社の取り組みをアピール。来場者はフェムトセルの最新状況をつかむことができた。

商用製品の生産を開始

写真1●商用バージョンの生産が始まった超小型基地局「フェムトセル」
写真1●商用バージョンの生産が始まった超小型基地局「フェムトセル」
写真は英ユビキシスが開発したフェムトセル。プロトタイプから大幅に本体を小型化している。大規模な商用展開は2008年中ころになる見通しだ。

 ユビキシスのウィル・フランクスCTO(最高技術責任者)は,「我々はフェムトセルの開発をほぼ終えた。商用バージョンのフェムトセルの生産を始めたところだ」と語る。

 同社の商用バージョンのフェムトセルは,プロトタイプと比べて大幅に小型化された(写真1)。本体にはバッテリーや電源スイッチを搭載していない。本体と電源アダプターをつなぎイーサネット・ケーブルを接続すれば動作する。「電源が入れば自動的に設定を開始するため,ユーザーは何も操作することなく使える」(フランクスCTO)。コア・ネットワークとの接続には,ブロードバンド回線を介して携帯網へアクセスできる技術「UMA」(unlicensed mobile access)を採用している。携帯網との認証には,フェムトセル本体に内蔵したSIMカードを利用する。

 トライアルも既に始まっている。「5社の通信事業者とトライアルを実施し,主に電波関連のテストを終了した段階」(フランクスCTO)という。2007年末にはラボでのテストから,数百人規模のユーザー・トライアルに移行する計画。フランクスCTOは,その後ゆるやかに商用化がスタートし,2008年中ころには大規模なフェムトセルの展開が始まると見ている。

 商用展開時の課題としては,既存の基地局とフェムトセルとの間の電波干渉が挙げられる。これについては,フェムトセルの電波出力を自動調整する機構をチップセット内に持たせることで解消する。英ピコチップのダグ・プーリーCTOは「フェムトセル自身が周りの電波状況を把握し,既存の基地局への影響を最小限にするため電波出力を抑える。我々はこの機構を改良することに最も注力している。既に実用レベルに近づいている」と語る。同社のチップセットは,ユビキシスを始め多くのベンダーが採用している。

日本勢も業界団体に積極関与

 Wireless 2.0に先立つ9月25日と26日には,フェムトセルを推進する業界団体「フェムトフォーラム」の第一回会合が米国ボストンで開催された。

 会合には米国や日本,欧州からベンダーや通信事業者が多数参加。日本からは,NECがフォーラムのボードメンバーに加わったほか,KDDIが同社のフェムトセル戦略についてプレゼンテーションしたという。