ケーブルテレビ運営統括会社のジュピターテレコム(JCOM)は今、米SOX法対応で2年目に突入している。初年度の対応を終えたものの、内部統制の有効性を評価する担当者の確保やERP(統合基幹業務システム)のアドオン・ソフトの監査に苦労した。

 JCOMが米SOX法対応プロジェクトを立ち上げたのは2005年7月。米国のメディア企業、リバティグローバル(LGI)の連結対象である同社は、06年12月期から米SOX法に対応しなければならなかったためだ。本番年度を含め、準備期間は1年半しかない。

 当初は、米LGIが派遣したコンサルタントから、プロジェクトの進め方や、必要な成果物について説明を受けていた。だが、文書の作成や内部統制の整備段階からは、基幹系システムの構築を依頼している住商情報システム(SCS)に、コンサルティングを依頼した。JCOMで米SOX法関連の内部監査を担当するインターナルコントロール推進部の稲木幹雄部長はその理由を、「当社業務に精通している担当者のほうが、プロジェクトを進めやすいと判断したため」と説明する。

 だが実際には、SOX法対応の全工程の支援をSCSの担当者に依頼することはできなかった。外部監査人から、「JCOMのシステムを開発したSCSの担当者自らが、システムを監査することは客観性に欠ける」と指摘されたのだ。JCOMは内部統制の整備に加え、テストの支援もSCSに依頼していた。

 この問題を解消するためJCOMは、SCSの担当者がかかわった開発案件をチェック。これまでにJCOMのシステム開発に携わった経験がない担当者をテスト担当にした。

 同様の問題は、JCOM社内でも発生する。JCOMのシステム部門において、米SOX法対応を進める担当者がテストを実施するのは、先と同じ理由から「問題がある」と指摘された。結局、システム部門の平山準マネージャーがインターナルコントロール推進部に異動することで客観性を確保した。

統制の対象とポイント
統制の対象とポイント

 客観性の確保に加え、予想以上に手間がかかったのが、ERPパッケージにかかわる内部統制の有効性の評価や監査である。

 JCOMは、会計などの基幹システムを独SAP製ERPパッケージを使って構築している。一般にERPパッケージを利用したシステムは監査工数が削減できると言われる。だがJCOMの場合、「ほかのアプリケーションと同様のレベルで証拠の提出などが求められた」(平山マネージャー)。

 その一例が、パッケージ本体では実現できないデータの処理や、帳票の作成を実現しているアドオン(追加開発)ソフトだ。特に、財務報告にかかわるデータを処理しているアドオン・ソフトについては、監査人から「1本、1本、処理内容が正しいかのテストをすべき」(同)と指摘を受けた。

 JCOMは、開発時のテスト結果を使って処理の正確性を証明することで、米SOX法対応のためのテストの代替とした。それでも、設計書や詳細なパラメータ設定などを監査人に求められることがあったという。

 JCOMの稲木部長は、初年度の取り組みを「費用も時間もかかった。だからこそ、業務効率化につなげる取り組みが必要だ」と振り返る。同社が初年度に整備したIT統制は約1000種。今後は、「初年度の経験を生かし、業務の標準化などを通じて、統制数の削減に着手する」(同)考えだ。