「Facebook」が脚光を浴びている。海外のメディアで連日のように報じられている今話題のソーシャルネットワーキング・サービス(SNS)である(写真1)。Facebookはハーバード大学の学生だったMark Zuckerberg氏が大学のキャンパスを模したネット・コミュニティを目指して立ち上げたサービス。当初は大学のユーザーに限定した小規模なサービスだったが,やがて一般ユーザーにも開放するようになり,今では全世界に5000万人の登録ユーザーを抱える巨大ネットワークになっている。

写真1●Facebookのユーザー・ページ   写真1●Facebookのユーザー・ページ
写真は筆者友人のページ(Arka Roy氏=ソフトウエア・エンジニア)
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 米国発のネット・サービスといえば昨年,MySpace,YouTube,Second Lifeが注目を浴びたが,今年2007年の“エース”は間違いなくFacebookだと言われている。ユーザーの増加率はMySpaceをはるかにしのぎ,今ではMySpaceに次ぐ世界第2位のSNSとなった(関連記事:主要SNSの利用者数,世界全体で大幅に増加)。

 ユーザー数は年内にも6000万人を突破するという勢いで,米Microsoftも巨額出資を決めた。SNSといえば,日本ではmixi,そして昨年日本に上陸したMySpaceが有名(関連記事:mixiの20倍以上,7000万人超の会員を誇る米国の最大手SNS「MySpace.com」とは?)。だがFacebookはそれらとは少し異なるようだ。今回はこのFacebookをレポートしてみる。大学キャンパス発SNSの魅力とはどういうものなのか?

あっという間に海外の旧友と“再会”

 Facebookは今まさにネットで旋風を巻き起こしているといってよいのだろう。試しに筆者も登録し,知人を探してみたら,目的はあっという間に達せられた。ユーザー登録後,十数年前カナダに住んでいたころの友人を検索するとすぐに発見。さっそく「友だち」申請をすると,数時間後に「許可」が届いた。彼の友だちリストを眺めていると,当時のルームメイトなど,懐かしい面々が出てきた。

 顔写真はみな少し年をとっていたが,プロフィールを見るとそれぞれ活躍しているようで頼もしい。みな元気そうだ。こんな形で彼らと“再会”できるとは夢にも思わなかった。住んでいる地域はそれぞれ違うが,みながFacebookでつながっている。そんな幸福感に浸った。きっとこんな体験をしている人は世界中のあちこちにいるのだろう。

Google,Yahoo!,Microsoftが触手を伸ばす

 Facebookに魅了されているのは,我々ユーザーだけではない。同社へは,かねてから,大手企業がコンタクトを取っていた。大手とは,米Google,米Yahoo!,米Microsoftの3社である。目的はFacebookの買収。みなFacebookを手に入れたいのだ。

 しかし,創業者のZuckerberg氏は同社を売却する気はさらさらないようで,これまで幾度となくオファーを断り続けてきた。なかなか一筋縄ではいかない人物である。Yahoo!やMicrosoftは,これまでも新興のネット企業にアプローチしており,とりわけ,FacebookやYouTubeといった有力ベンチャーには苦戦してきた。Yahoo!はFacebookの買収に失敗し(関連記事:新生Yahoo!よ,どこへ行く!!),MicrosoftはYouTubeをGoogleに奪われ,苦汁をなめたという経緯がある。

 そうしたなか米国時間10月24日,このFacebook争奪戦に一応の決着がつく出来事が起こった。MicrosoftがFacebookとの大規模資本・業務提携を決めたのだ。提携内容は,MicrosoftがFacebookに2億4000万ドル出資し,同社株の1.6%を取得するというものだ(関連記事:MicrosoftがFacebookに2億4000万ドル出資へ,広告配信の提携を強化)。

 実は今回の提携に至るまで,次のようないきさつがあったと言われている。2006年の9月,Yahoo!はFacebookと会談を設け,同社に10億ドルで買収提案をした。翌月,これに対抗しGoogleが23億ドルを提示したのだが,当時Facebookは自らの価値を80億ドルと評価しており,結果的に交渉は決裂した。

 今回の2億4000万ドルの出資と1.6%の株式取得は,結局MicrosoftがFacebookの企業価値を150億ドルと評価したことを意味する。わずか1年で企業価値が2倍近くまで増えたのだ。

Microsoftの投資効果,現時点では限定的

 今回Microsoftはうまく競り勝ったという格好になるが,はたしてその投資効果はあるだろうか。現時点での出資比率はわずか1.6%で,GoogleのYouTube買収(関連記事:YouTube買収が浮き彫りにした「Googleのスプロール現象」)のようにFacebookをまるごと手にしたわけではなく,自由にコントロールすることはできない。

 GoogleによるYouTubeの買収額は16億5000万ドル,MicrosoftによるaQuantiveの買収額は60億ドルだった。これらに比べるとFacebookへの150億ドルという“評価”は,やはり高い。Facebookは,自社の年間売上高が2015年までに10億~15億ドルになると見込んでいる。Microsoftが評価した150億ドルはこれをベースに算出されたようだが,現実のFacebookはまだ収支トントンの新興企業。米eBayのような失敗は避けるべきである(関連記事:ネット電話の代名詞,Skypeの価値が半減した理由)。だからといって,有望な企業は放っておくとライバルにとられてしまう。今回の出資にはそんなMicrosoftの判断があったのだと思われる。

 この提携により,Microsoftは全世界のFacebookサービスで独占的に広告を配信できるようになるが,どうやらその分野は限定的なものになるようである。Financial Timesの記事によれば,今回の業務提携の対象範囲はバナー広告に限られる。つまり,検索などバナー以外の広告媒体に関しては,GoogleやYahoo!もFacebookと契約できる可能性があるのだ(Financial Timesの記事)。