町田会長の基調講演で示された世界のデジタル放送化スケジュール
写真1●町田会長の基調講演で示された世界のデジタル放送化スケジュール
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 家電業界の総合展示会「CEATEC JAPAN 2007」(2007年10月2~6日開催)の初日に,シャープの町田勝彦会長が電子情報技術産業協会(JEITA)を代表する形で,「デジタルコンバージェンスが切り開く新しい生活」をテーマに基調講演を行った(写真1)。この中で筆者が最も興味深かったのが,放送のデジタル化に関する世界の動向である。


 世界に先駆けて2009年に放送の完全デジタル化を予定している米国のほか,EU(欧州連合)諸国や日本,韓国がそれに続く。2015年ごろには,中国やブラジルも放送のデジタル化を完了する。筆者が付け加えるとすれば中国で2007年9月末に,ケーブルテレビ(CATV)向けの番組を配信していた「アジアサット」や「テルスター」などの通信衛星が,「チャイナサット6B」という新型の大出力衛星に集約されたことである。2008年の北京オリンピックに向けて,デジタルCATVシステムの構築にまい進している。


世界的な放送の完全デジタル化に向けてHDTV録再機が第3世代へ

 またブラジルでは,日本の「ISDB-T」方式が採用された地上デジタル放送の規格化も進んでいる。いずれにせよ世界各国で,HDTV(ハイビジョン)画質のデジタル放送が進むことは十分に予期される。SDTV(標準画質テレビ)中心のEUでも次第に,HDTVの番組配信を指向する地上波放送事業者が増えるという話がある。放送のデジタル化が進む国では,「ブルーレイディスク」(BD)や「HD DVD」といった録画方式のハイビジョンレコーダーが5万円程度の価格になれば一気に普及するといったシナリオが用意されている。その前哨戦が,今回のCEATECで始まった。

 第1世代がBD Ver1.0のディスク規格,第2世代がBD Ver1.3のディスク規格と初代HD DVD規格である。そして今回のCEATECで両陣営が取り入れたのが,「H.264/AVC HD」という高圧縮技術による低ビットレートのハイビジョン録画技術である。現行のDVDメディアに,2時間の映画をハイビジョン画質で録画できるという。


ソニーと松下電器から冬商戦のBD録再機が登場

 CEATECの直前にプレス発表して実機を展示したのが,BD陣営のソニーである。MPEG-2で圧縮された放送番組の映像をH.264でエンコードすることで,長時間録画を可能にした。実演を見る限り,6Mb/s程度まで転送レートを落としても十分に鑑賞に耐え得る。これならBDメディア1枚(50GB)に,16時間の地上デジタル放送のハイビジョン番組を録画できる。またHDDに蓄えたハイビジョン番組を,あとからH.264にエンコードし直すことにも対応している。ソニーのDVDディスクカメラやメモリーステックに記録されたAVC HD規格のハイビジョン映像もデジタルのままダビングすることに力点を置いた機種もあり,デジタルテレビ「BLAVIA」との接続性をより高めて消費者の囲い込みを図りたいという,同社の意気込みが感じられた。

 BD陣営では松下電器産業の製品もソニーと同様に,AVC HD規格によるハイビジョン番組をH.264でリアルタイムにエンコードできる機能を持つ。特徴的なのは,AVC HD規格のデジタルハイビジョン番組を現行の両面2層のDVDメディアに記録するという試みである。11月にはいよいよ,松下電器の製品から順次店頭に並ぶ。冬のボーナス商戦において,松下電器とソニーの第3世代BD録再機がどのような評価を受けるかに注目している。ただし,「ダビング10=コピー9」への対応については,消費者に機器を買い替える負担をかけない方法を検討中とのことである。